日本化學會誌
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蛋白に關する研究(第十九報)
各種蛋白中の糖含量に就いて
近藤 金助村山 仁
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1933 年 54 巻 5 号 p. 351-363

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抄録

(1) Orcin硫酸液に微量な糖類を加へて加熱した時に生ずる呈色反應を利用すれば供試液1cc中に存在する0.1-0.4mgの糖類を定量し得られることを確め,更に此の方法は蛋白内の微量糖類の定量にも應用し得られることをも確めた.
(2) 從つて此のOrcin硫酸液による比色法によつて動植物性蛋白15種中の糖類量を葡萄糖として定量した.もとより蛋白中の糖類量は蛋白の單離精製法によつて影響せられるが故に供用蛋白を單離した操作を要録した.
(3) 供用した蛋白は何れも精製度が相當高いものであつたにも拘はらす,少なきは0.5%多きは5.5%の割合に於て糖類を含有して居つた.
(4) 蛋白中の糖類はその蛋白を含む自然物料中の糖類と密接なる關係を持つことを明らかにし併せて蛋白中の糖類の本質を推定した.
(5) 單離精製した蛋白中に糖類が存在する原因に就ては二つの場合を考へて見た.一つは單に機械的に夾雜する場合であつて蛋白を單離する際に用ふる溶媒内で糖類も亦蛋白と行動を共にするからである.而して此の種の糖類は蛋白の精製操作を反復すれば減退せしめ得ることを例示した.
(6) 他の一つは蛋白と會合して居る場合である.此の會合は蛋白の基成分と糖類分子との間に行はれるのであつてその原因はイオン間引力又は多極性能に基く副化合能である.而して此の副化合能即ち會合力は蛋白の種類,溶媒の性質状態等によつて強弱の差が連續的であるが其の強きものは自然界に於て蛋白が基成分から集成せられる時に既に或る基成分と糖類とを強く會合せしめてあるが故に精製操作を反復しても此の糖類は蛋白から脱落しないのである.夫故にかゝる糖類は事實上蛋白構成の一因子であると考へるべきである.

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