日本化學會誌
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鯛に關する榮養化學的研究(第二報)
鯛の年齡と肉成分
波多腰 ヤス
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1933 年 54 巻 9 号 p. 852-858

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抄録

1932年2月淡路近海にて漁獲した雌鯛7歳, 5歳, 4歳のものの肉に就て分析した結果を要約すれば次の通りである.
1)各年齡の鯛に於て脊肉,腹肉(肋骨をふくむ腹肉を除く)及び尾肉の部分は約36%である.
2)鯛肉の成分量は年齡によつて著しく相違し就中水分,蛋白及び灰分量は鯛の年齡が進むに從つて減少するが脂肪量は増加して居る〓之は鯛の老若に從つて内部活動の程度に差あることを暗示し引いては鯛肉の食味が鯛の年齡によつて相違あることの原因と看做した.
3)鯛肉成分量は上述の如く年齡別によつて變異するがその程度は季節別に於て更に顯著であることを示した.
4)鯛肉汁液のpaH價は年齡が進むに從つて稍々減少することを認めたが汁液中の全窒素量竝にアミノ態窒素量と年齡との間には何等相關關係を見出し得なかつた.
5)鯛肉全蛋白を調製して全窒素量と窒素の形態とを測定した結果年齡別によつて顯著な相違を見出し得なかつた.換言せば鯛肉の年齡別による食味の差異は肉蛋白の組成の相違に原因しないことを明らかにしたわけである.
6)生體蛋白の彷徨變異説を略述し,同性の鯛は其の環境(季節及び榮養等を意味す)が等しければ年齡別による肉蛋白の彷徨變異は輕微であるが季節別(環境と榮養の別をも意味す)と雌雄別とによる變異は顯著であることを示した.
終りにのぞみ終始御懇篤なる御指導を賜りし近藤金助先生に對し滿腔感謝の意を表し同時に實驗に際し多大の御助力を蒙りたる同實驗室の坂田太郎氏,山田孝雄氏,森茂樹氏等に深謝し尚ほ供試鯛を特に選擇寄贈し併せて調理の勞をとりたる京都市木屋町鮒鶴に對し謝意を表す.

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