日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
水の氣相液相に於ける同位元素平衡
生島 正次阿座上 信治
著者情報
ジャーナル フリー

1938 年 59 巻 1 号 p. 40-46

詳細
抄録

1) 重水と其蒸気との間の重水素交換平衡(H2Oliq+HDOgas〓H2Ogas+HDOliq)の平衡恒數K(=[H2O]gas[HDO]liq/[H2O]liq[HDO]gas)に關する堀内,岡本及びUrey, Urey, Wahlの定測結果は一致しない.兩者の方法の缺點と思はれるものを除去し,測定範圍を0°C~160°Cに擴張して測定を行ひ最後的の結果を得んとするのが本研究の目的である.
2) 蒸氣の一部を取り出す際,液と蒸氣との平衡を亂さず,而も不可逆的に之を凝結せしむる爲, 0°C~18°C, 50°C, 100°C, 160°Cの各實驗温度に夫々特殊な装置を考案した.
3) 其の結果著者等の測定値Kは前二者の測定値の中間に位し,而も温度係數は夫々の温度域に於いて略前二者のものと一致してゐる.
4) 若干の妥當なる假定に依り, K2=pH2Oo/pD2Ooなる關係を導いた.軽重水の蒸氣壓の比pH2Oo/pD2OoをMenzies及びMilesの實測より算出して, K2と比較せるに,全測定域0°C~160°Cに於いて滿足すべき一致を見た.
5) logK~1/T曲線及び(logpH2Oo/pD2Oo)~1/T曲線の經過より液態水の構造に付いて考察した.
終りに御懇篤なる御指導を賜つた堀内教授並びに岡本助教授に深謝の意を表します.尚研究費の一部を補助せられたる學術振興會に對し謝意を表します.

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top