日本化學會誌
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蛋白カルシウムの研究(第三報)
過熱水作用の實驗
宮本 貞一
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1939 年 60 巻 9 号 p. 745-757

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抄録

1) Casein, dephosphorized casein, deaminized casein, fibroin, glycinin及egg albumin等のカルシウム鹽溶液に就いて各々150ºに於て過熱水を作用せしめた.
2) カルシウム蛋白は過熱水の作用により何れも可溶物質及不可溶物質を生ず.而して可溶物質量は等電點に於ける之等蛋白質の可溶物質量より大にして溶解速度はpH及鹽類の種類により異なる.
3) 可溶,不可溶両成分共アルギニンの分解により鹽基性窒素の減少を來たす.之は溶液のpH及共存する鹽類の種類により異なる.可溶物質は部分的水分解物よりなり,加水分解度は等電點の蛋白質に於けるよりも大である.
4) Ca caseinate及deaminized caseinateに於ける燐は殆んど全部不溶性燐酸カルシウムに變化するにより,不可溶物質に移行する.
5) カゼインに於て燐酸に結合するカルシウム以外のカルシウムはdephosphorized caseinに結合するカルシウムと等しく,結合カルシウムの一部は燐酸に依る.
6) Casein及deaminized caseinに結合するカルシウム量には殆んど差異なくカルシウムの結合はアミノ基に與らない.叉カルシウムはcarbamateをなして結合してゐるのではない.
7) 蛋白質に結合するカルシウム量は遊離カルボキシル基と等量であつてカルシウムの結合は蛋白の遊離カルボキシル基に依る.蛋白質に結合するカルシウムの原子價の一はカルボキシル基と一次的に結合し他は水酸基或はイミノ基と二次的に結合する.

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