日本化學會誌
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60 巻, 9 号
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  • 過熱水作用の實驗
    宮本 貞一
    1939 年 60 巻 9 号 p. 745-757
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1) Casein, dephosphorized casein, deaminized casein, fibroin, glycinin及egg albumin等のカルシウム鹽溶液に就いて各々150ºに於て過熱水を作用せしめた.
    2) カルシウム蛋白は過熱水の作用により何れも可溶物質及不可溶物質を生ず.而して可溶物質量は等電點に於ける之等蛋白質の可溶物質量より大にして溶解速度はpH及鹽類の種類により異なる.
    3) 可溶,不可溶両成分共アルギニンの分解により鹽基性窒素の減少を來たす.之は溶液のpH及共存する鹽類の種類により異なる.可溶物質は部分的水分解物よりなり,加水分解度は等電點の蛋白質に於けるよりも大である.
    4) Ca caseinate及deaminized caseinateに於ける燐は殆んど全部不溶性燐酸カルシウムに變化するにより,不可溶物質に移行する.
    5) カゼインに於て燐酸に結合するカルシウム以外のカルシウムはdephosphorized caseinに結合するカルシウムと等しく,結合カルシウムの一部は燐酸に依る.
    6) Casein及deaminized caseinに結合するカルシウム量には殆んど差異なくカルシウムの結合はアミノ基に與らない.叉カルシウムはcarbamateをなして結合してゐるのではない.
    7) 蛋白質に結合するカルシウム量は遊離カルボキシル基と等量であつてカルシウムの結合は蛋白の遊離カルボキシル基に依る.蛋白質に結合するカルシウムの原子價の一はカルボキシル基と一次的に結合し他は水酸基或はイミノ基と二次的に結合する.
  • 佐野 幸吉
    1939 年 60 巻 9 号 p. 758-762
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1. 水蒸氣による金屬の酸化平衡測定装置を考案し, 3Fe+4H2O=Fe3O4+4H2に適用し,次ぎの關係を得た.
    logKp=-1667.4621/T+1.492
    2. 測定結果から熱力學的數値を計算すれば次ぎの如くなる.
    Fe3O4+4H2=3Fe+4H2O
    ΔH=39444-5.70T-0.0111T2
    ΔFº=39444+5.70TlnT+0.0111T2-85.238T
    ΔH298=36759cal ΔFº298=24707cal ΔS208=40.44E. U.
    3. 四三酸化鐡の生成熱,生成遊離エネルギー及びエントロピー變化を計算すれば
    3Fe+2O2=Fe3O4
    ΔH298=-268027cal ΔFº298=-242735cal ΔS298=-84.87E. U.
    4. 四三酸化鐡のエントロピーは S298(Fe3O4)=33.7E. U.となる.
    5. 水酸化ストロンチウムの解離水蒸氣壓に關し次ぎの關係式を得た.
    logPH2O(mm)=-5405.9738/T+8.3846
    6. 測定結果から次ぎの熱力學的數値を計算した.
    Sr(Oh)2=SrO+H2O
    ΔH=25078-1.40T+0.00135T2
    ΔFº=25078+1.40TlnT-0.00135T2-33.89T
    ΔH298=24780cal ΔFº298=17236cal ΔS298=25.32E. U.
    7. 水酸化ストロンチウムのエントロピーとしてS298(Sr(OH)2)=32.8E. U.を得た.
  • 金子 清次
    1939 年 60 巻 9 号 p. 763-768
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    Happelに依つて與へられた氣體の状態方程式が滲透壓と溶液の體積間の關係に就て成立するものと假定し稀薄溶液中に於ける非電解質の滲透壓係數,積分稀釋熱,相對的熱含量,分子熱,活量係數及び微分分子容を計算した.
  • 小林 正久, 槌田 龍太郎
    1939 年 60 巻 9 号 p. 769-773
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    固體吸收スペクトルの測定方法として,單一結晶法,顯微鏡法,及び反射法の三種を述べ,それぞれ,大なる結晶の得られる場合,微細結晶のみ得られる場合,及び無定形な状態でしか得られぬ場合,に應じて適用し得られることを示し,實験例として,クローム明礬, [Co(NH3)4Cl2(1)(2)]Cl, [Co(NH3)4CO3]Cl, [Co(NH3)4CO3]NO31/2H2O, [Co(NH3)4CO3]2SO43H2O, ZnS, C4〓S, HgS (辰砂)の吸收曲線を報告せり.
  • メチル澱粉及びメチル纎維素の脱メチルに就て
    荒木 長次, 端 與之助
    1939 年 60 巻 9 号 p. 774-782
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    メチル澱粉及びメチル纎維素に低温度にて高濃度臭化水素酸を約9日間作用せしめたる時は何れも脱メチルと共に加水分解してd-Glucoseを分離せり.而かもその傾向は兩者略々同様なるもメチル纎維素稍々容易なるが如し.尚脱メチル物質中にはd-Glucoseの外,一部Oligosaccharides又は重合體の混在せるを以てd-Glucoseの單離には更に之を稀薄酸にて加水分解を行ふ方可なるべし.以上の反應はメチル澱粉及びメチル纎維素に限らず,一般にAldoseを成分糖となせる多糖類のメチル誘導體より脱メチルと共に成分糖を單離せんとする目的に使用し得べし.
  • 糖類メチル誘導體の高濃度沃化水素酸による脱メチルに就て
    荒木 長次, 端 與之助
    1939 年 60 巻 9 号 p. 783-791
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    前三報は低温に於ける高濃度臭化水素酸による糖類メチル誘導體の脱メチル反應に就て報告せり.本研究は低温に於ける高濃度沃化水素酸による糖類メチル誘導體の脱メチル反應に就て行ひたり.高濃度臭化水素酸による時は脱メチルの略完了するに約9日を要したるに高濃度沃化水素酸にては僅に24時間にて略完全に脱メチル行はれ,その結果Aldoseのメチル誘導體は原糖となり, Aldoseを成分糖とせる重糖類及び多糖類のメチル誘導體は脱メチルと共に加水分解して成分糖となる. Ketoseのメチル誘導體は之は之に反しタール状物質に變化せり.又沃化水素酸による時は短時間内に脱メチルの完全に行はるるためなるか臭化水素酸に比し原糖又は成分糖の單離極めて容易なり.
  • α-Oxy-β-brom-triphenylmethyl-dihydro-isochavibetol及び其のAlkyläther
    廣谷 種次
    1939 年 60 巻 9 号 p. 792-796
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    先きにトリチル-イソカビベトール-ヂブロミドの一箇の臭素原子は特に活動性を有する事實發見され,此の臭素原子はα位のものなるべしと推定せられたり(船久保1)).著者はP. Hoering氏法に依り,オキシーモノブロミドを合成し活性水素を測定して,モノオキシ化合體なる事を確め,且水酸基の位置が推定の如くα位なる事を確認し得たるを以て報告す.
  • α-Alkoxy-β-brom-triphenylmethyl-dihydro-isochavibetol
    廣谷 種次
    1939 年 60 巻 9 号 p. 797-800
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    トリチル基の存在はイソカビベトール,ヂブロミドの一個の臭素原子を特に活動性となす事實を追試しn-Propyl-,よりn-Hexylalkoholに至る八種のアルコールとトリチル.イソカビベトール,ヂブロミドとを數分間加温するのみにて完全にα位の臭素原子をアルコオキシ基と置換せしめ得る事を得たり.
  • 唇形科イヌカウジユ屬の種子油に就て
    畑 忠太
    1939 年 60 巻 9 号 p. 801-804
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    唇形科植物中東亞に特有なる品種イヌカウジュ(Orthodon)屬につき種子油の檢索をなしたり.供試植物はOrthodon formosanum Kudo, O. lanceolatum Kudo, O. chinense Kudo, O. grosseserratum Kudo, O. leucanthum Kudo, O. hirtum Hara,の6種にして收油率は11~26%,油脂の沃素價は158~182,脂肪酸は固體酸13~14%液體酸86~87%にして前者はパルミチン,ステアリンの兩酸,後者はオレイン,リノール,リノレインの三酸よりなる.不鹸化物は1-5%にして2%以上を含有するものはその油脂に精油臭を有しテルペン系炭化水素を含有す.之等の中Orthodon lanceolatum Kudo. (タイワンイヌカウジユ)は油脂資源として興味ある品種なりと思考せり.
  • II蟻酸ソーダの加熱曲線と其の生成物に及ぼす添加物の影響
    高木 外次
    1939 年 60 巻 9 号 p. 805-812
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1) 約2%の苛性ソーダを含む蟻酸ソーダを加熱し、次の轉移點を有する事を確認した.
    212°C HCO2Na+NaOH=Na2CO3+H2 (1)
    252°C蟻酸ソーダの融點
    250°C<2HCO2Na=Na2C2O4+H2 (2)
    (1) の反應温度は苛性ソーダの分量によつて異らず單なる異相反應なる事を確認した.
    2) 苛性ソーダによる融點降下を測定した.
    3) 苛性カリを含む蟻酸ソーダの分解も苛性ソーダの場合と同様な事を認め次式による事を發見した. 2HCO2Na+2KOH=K2CO3+Na2CO3+2H2
    4) アルカリ土金属の酸化物又は水酸化物を含む蟻酸ソーダは300°C以下でも蓚酸鹽を生成することを發見した.此事實からBoswell並にDickson1)の苛性ソーダの觸媒能は其内部に融解せる水分に因るとの説は信じ難い.然し其活性は弱して300°C以上では消失し純鹽の場合と蓚酸鹽生成に著しい差を認めない.
    5) 炭酸及び蓚酸ソーダの觸媒能の有無に就き從来屡論議が繰返されるから茲に檢討した.前者は400°Cでも蓚酸鹽量35%以上生成せしめないが,後者は純鹽の場合よりも稍低温で幾分の蓚酸鹽の増加を見る即ち蓚酸鹽は觸媒能を有する.
    6) 急熱による蓚酸鹽増加は恐らく蓚酸鹽生成速度及び炭酸鹽生成速度に於て前者の温度係數が後者の夫よりも大なるに因る.
    7) 蓚酸鹽製造の加熱條件は上述根據からしてi) 苛性ソーダ2%を有する蟻酸ソーダをii) 急熱して310°C以上に達せしめることである.
  • III純蟻酸ソーダの熱分解速度
    高木 外次
    1939 年 60 巻 9 号 p. 813-825
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1) 蟻酸ソーダの分解反應速度を271°乃至367°Cに於て測定した.其融點以後或る時間均一系を呈し(300°C以内では約2時間均一系である)炭酸ソーダのみ生じ其速度はdx/dt=k(a-x)2なる2分子反應としてよき恒數kを與へる. 340°Cに於て數十分加熱後初めて蓚酸鹽生成し而も聯立併行二次反應即ちk1及びk2を夫々炭酸及び蓚酸鹽の速度恒數とするとd(x+y)/dt=(k1+k2) (a-x-y)2が成立して且つk1及びk2の比が一定である.尚温度を昇げてる此關係が維持せられる.即ち炭酸ソーダ及び蓚酸ソーダの生成反應は連續反應でなくて完全なる併行反應なることを確認した.又k1の温度係數がk2の夫よりも小であるから急熱して高温に達せしめると蓚酸鹽量が大となる.此事實は急熱法利用の一根據である.
    2) 360°C以上に於ける蟻酸ソーダの加熱は約50分の後蓚酸鹽及び炭酸鹽の析出によつて完全な異相反應となる.茲で反應速度は初期に於て上昇し,極大に達し,それより再び降下する所謂彎曲點を有するS字型曲線で表されるもので,從来“固體→固體”反應に於ける自觸反應と全く同様に“融態→固體”反應に於ても亦自觸反應の存することを發見した.其の速度はLewisのdx/dt=kxに隨はないで速度上昇部(上方凹部)に於てはFränkelの如くdx/dt=kt2に隨ひ,速度降下部(上方凸部)に於ては, dx/dt=A-B(t∞-t)2に隨ふ事即ち界面に限定されることを見出した.
    3) 上記自觸反應(融熊蟻酸ソーダ→固定炭酸ソーダ+蓚酸ソーダ)中炭酸鹽の方は遙に活性が乏しい.
    4) 蓚酸鹽生成の自觸反應は初期に於て生成せる活性中心を有する蓚酸鹽分子たる反應核の數によつて殆ど左右され,而も途中の加熱に依つては反應核は殆ど増加しない爲,反應初期に急熱昇温すれば此反應を著しく促進せしめられることを確認した.之が所謂急熱法の利點の根本原理である.
  • 載荷試驗
    森田 徳義, 千谷 利三
    1939 年 60 巻 9 号 p. 826-830
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    大阪市築港測候所構内に於て試錐機によつて採取した土質の各部分に就いて破壊的沈下を起すに要する載苛強度を測定し,地表面下凡そ15米乃至20米の部分に最弱粘土層の在る事を知つた.
  • 含水率,乾燥速度及び收縮率
    森田 徳義, 千谷 利三
    1939 年 60 巻 9 号 p. 831-834
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    大阪市築港測候所構内に於て試錐機により採取した土質に就き,含水率,乾燥速度及び乾燥による收縮率を測定し,乾燥速度は土質によつて異つた特徴を示し,又收縮率は地表面に近き部分の土質に於ては方向によつて著しき差異のある事を知つた.
  • 田所 哲太郎, 高杉 直幹
    1939 年 60 巻 9 号 p. 835-838
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    本報告に記載する實驗結果に見る新事實を要約するに(1)従来報告せられたる蛋白質銅鹽のAscorbin酸オキシダーゼ酵素力と同一作用を多糖質即ちMannan及びAlgin酸の銅鹽等にも發見せり.(2)此等人工的銅鹽の酵素作用はアスベスト表面に固定せる銅鹽の酵素作用と近似するを認む.(3)前報告に述べたるNucleotideグアニール酸に發見したる該酵素力とを此等銅鹽のものとの反應速度恒數を比較するによく類似すれど,之を花甘藍より得たるAscorbin酸オキシダーゼのものと比較するに稍々異り前者は共に時間經過により恒數を著しく低下する特色を有せり.
  • 太秦 康光, 香山 勳
    1939 年 60 巻 9 号 p. 839-844
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1. 有機試藥による金屬の沈澱はchemical factor小なるが故に,その容量を測定して該金屬の定量をなすに適當してゐるであらうと考へた.
    2. ヂメチルグリオキシムよるNiの沈澱は,比重が餘りに小さい爲遠心器を用ひても沈澱の集積に成功しなかつた.
    3. オキシンによつてNi, Co, Zn, Mn, Wを沈澱せしめ,遠心器によりその容量を測定した結果は,この方法が相當實用性に富むことを認め得た.
  • 山崎 誠子
    1939 年 60 巻 9 号 p. 845-848
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    朝鮮産玄米を粒の大,中,小に分ちて夫々につき,粉の粗精の割合,玄米の結合水分,並びに脂肪の性状を吟味し,中粒米は結合水最も多く,脂肪酸價最小なるを觀たり.
  • グルコスルファターゼ模型(第二報)
    江上 不二夫
    1939 年 60 巻 9 号 p. 849-852
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    グルコスルファターゼ作用影響を及ぼす糖類,燐酸鹽,重金屬鹽類等のグルコスルファターゼ模型としてのヒドラヂンに及ぼす影響を研究した.
  • 諸硫酸エステルとTrypaflavin, Rivanol等との沈澱反應
    江上 不二夫
    1939 年 60 巻 9 号 p. 853-855
    発行日: 1939年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    或種の硫酸エステルは水溶液中よりTrypaflavin, Rivanol等により不溶性鹽を作り沈澱する.この沈澱性は硫酸エステルのスルファターゼ類による酵素的分解性と平行關係を示す.尚,この沈澱反應は或種の硫酸エステルの分離,精製,定量に,又硫酸エステル混合物の分別に應用することが出來る.
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