1940 年 61 巻 12 号 p. 1261-1268
d-酒石酸-硫酸銅-苛性曹達系錯鹽溶液の組成を色々に變へ,酒石酸と硫酸銅のモル比を1:2, 1:1, 2:1, 3:1, 5:1等の各々の場合に苛性曹達の量逐次増して旋光度を測定した結果,極大,極小,再び極大の3點を有する曲線を得た.而もd-酒石酸と硫酸銅のモル比が1:2,及1:1の場合には,極小値は大きな左旋性の値となる.
l-酒石酸の場合はd-酒石酸の場合と全く對稱的な結果を得た.
此の如く溶液の旋光性が異常的に變化する原因は,構造上特定の旋光性を有する錯基が不齊的に生成せられ,爲に錯基の不齊構造に基因する旋光性が生ずるものと説明した.
此の場合錯基の旋光性は配位する酒石酸がdの場合はlでありl-酒石酸の場合はdである.而して錯基の不齊構造に基因する旋光性は一般の旋光性分子の旋光性に比較して著しく大きい.
最後に酒石酸-銅-アルカリ系錯鹽溶液の吸收帶及び旋光度測定結果より,溶液中の錯基の構造を推定した.
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