日本化學會誌
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プロリン及びオキシプロリンの立體化學的構造に就て
アミノ酸の立體化學的研究(III)
金子 武夫
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1940 年 61 巻 3 号 p. 207-219

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抄録

プロリンのα不齊炭素原子とオキシプロリンのα及びγ不齊炭素原子の立體的配位を決定する事が出來た.
(1) 天然の(-)-オキシプロリンより誘導せる(-)-N-アセチール・オキシプロリンを過マンガン酸加里で酸化すれば天然系l(+)-アスパラギン酸が得られ, (2) 同様に(-)-オキシプロリンより誘導せる(-)-クロールプロリンを還元すれば天然物と一致する(-)-プロリンとなる事から,天然の(-)-プロリン及び(-)-オキシプロリンのα不齊炭素原子の立體的配位は他の總ての天然のアミノ酸と同様l系に屬する事が確實になつた.
(3) (-)-クロールプロリンを過マンガン酸加里で酸化すればl(-)-クロール琥珀酸が得られるが,五鹽化燐によるオキシプロリンのクロール化にはWalden轉位を伴ふ故,天然の(-)-オキシプロリンのγ不齊炭素原子の立體配位はd系である.又(-)-N-アセチール・オキシプロリンはγラクトンを作らない.之等の事實より天然の(-)-オキシプロリンのカルボキシル基と水酸基とは方向が相反する.
更に以上の結論に基いてピロリヂン系アルカロイドの立體化學的構造にも論及した.

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