日本化學會誌
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エゴノールの研究(第十一報)
エゴノール分子中の炭素原子に結合せる活性水素原子に就て
川合 眞一杉山 登中村 隆雄小松 和
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1940 年 61 巻 5 号 p. 487-494

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抄録

アセチルーエゴノール(Ia)は單にその極限式を表して居るに過ぎないものであつて本系列化合物に於てはA1, A2, B1, B2, B3,等のMesomerieを考へなくてはならぬ. 7位メトキシル型酸素及びフラン環酸素中の遊離價電子對の“+M”効果によつて3, 4, 6位の3炭素原子は何れもその電子密度を増大するから3, 4, 6位の水素原子は強弱の差こそあれ何れも活性を帯びて居る.アセチルーエゴノール臭素化の際は4位水素原子の活性最大であり,ニトロ化の際には3位水素の活性が最大であるZerewitinoff微量法により活性水素を測定すると6-メトキシ-2-フェニルークマロンが最小値(零),アセチル-エゴノール(7-メトキシ-2-フェニル-クマロン誘導體)が最大の値を與へたからアセチル-エゴノールに沃化メチルーマグネシウムを作用せしめた時1モル近くのメタンを發生せしめた活性水素原子(第六報參照)は4位の炭素に結合した水素ならんと推定する.換言すれば此場合Mesomerie状態A1を經過すると考へる. 4-プロムー及び4-ニトローアセチル-エゴノールの構造決定には主として第十報の實驗を參酌して“エゴノール反應の陰性”なる點に立脚した.アセチルーエゴノールのニトロ化に際して反應主生成物3-ニトローアセチルーエゴノールを得た傍ら4-ニトロ-及び6-ニトロー異性體をも單離し得た事實はB1←→B2←→B3なるMesomerieの存立を多分に暗示し他面既往實驗(本文の終り參照)を囘顧してIa←→A1なるMesomerieの存立を證明し得たと思ふ.

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