日本化學會誌
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タイワンニンジンボク精油に就て(第一報)低沸點部
市川 信敏山下 武夫
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1940 年 61 巻 8 号 p. 787-792

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抄録

臺灣全島の山野に落葉性灌木として多量に野生する,タイワンニンジンボク(Vitex Negundo Linn.)の精油につき,その成分を明かにし,且つ其の適當なる利用方面をも知らんと欲したり.
就中,本油の高沸點部分には苹果皮様佳香を有するセスキテルペン油分存在すること既に,加福,田崎兩氏の研究に依りて明かにせられたるにより特に其の部分の探究に力を致し傍ら,前記報告に於て不明なりし部分を明かとなし,臺灣産天然資源の利用に資せんと欲したり.然して本報告に於て本植物精油中には, l-α-ピネン,カムフェン(?), l-サビネン,シネオール, β-カリオフィレン,及び苹果皮の佳香を有する一種のセスキテルペンアルコール,及び一種のアズレンの存在を確定したり.
就中,カリオフィレンは本油の主要成分にして,全油の凡そ30%存在す.苹果の快香を有するものは,著者等の研究によればセスキテルペンアルコールにして,第三級アルコールに屬し蟻酸によリアズレンを與ふるを知り得たるのみにして,特徴ある結晶性誘導體並にその化學構造の點に就ては未だその全貌を明となすに至らず.

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