日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
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61 巻, 8 号
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  • 三浦 彦次郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 761-769
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) 澁黒温泉地帶湧泉中に含有せられる硫酸の成因として岩漿生成の地下より發生し來るH2O, CO2, H2Sが上昇の途中O2混入する時はS, SO2, H2SO4等を生成すべく更に熱水溶液中にてもH2S, 02, SO2, SよりH2SO4を生成すべく尚淺地下水が湧泉に滲透する際H2SO4を溶解し來るものもあり得べき事を述べた.之等諸生成根源中何れのものが主根源なるかは湧泉個々に就き各種條件を考慮に入れて考察せねばならぬ事を述べた.
    (2) 澁黒温泉地帶の噴氣孔や湧泉中に見出される硫黄は他の硫黄化合物である硫化水素,硫酸等と關聯して硫黄蒸氣として或は水溶液中の沈澱硫黄として生成する.
    (3) 澁黒湧泉中の珪酸は湧泉が岩石を溶解し珪酸を溶存する事實から地下深部より液相として來たものではなく地下水が地下深部より來る發散蒸氣の爲加熱せられ鹽酸酸性泉として湧出する途中にて溶解せるものが主なるもので尚淺地下水の混入によつて溶存するに至るものもあり得るものと考察した.
    (4) 澁黒湧泉中のアルミニウム,鐵,カルシウム,マグネシウム等の成因は珪酸と同樣に考へられる.
    (5) 澁黒温泉地帶湧泉は酸性泉のみにて之等は噴出或は生成せられる鹽化水素,硫酸によつて酸性となるものである.然し熊澤蒸湯温泉その他にて見出されたアルカリ性泉は地下より酸性泉として上昇し來れるものが接触共存する岩石,土壌の性質,接触時間の長短,噴出瓦斯成分の性質等の關係によつてアルカリ性泉に變化し湧出せるものと考察した.
    (6) 澁黒温泉地帶の活動の中心を燒山と考へると噴出瓦斯成分,湧泉成分,温度に就きてはDeville説の如き關係は認められないが大沸及びその下流に於ける湧泉成分に關してはDeville説と一致する樣に見える.
    (7) 大沸湧泉は地下岩漿より發散し來る瓦斯の力が地下水としての湧出力に相加はつて噴湯湧出するもので大沸下流方面のものは主として地下水としての湧出力によるもので大沸上流方面のプールをなして噴湯してゐるものは水蒸氣の凝縮せるものと淺地下水の透入し來れるものとが瓦斯及び水蒸氣の上昇力によつて噴湯湧出するものと考察した.
    (8) 澁黒温泉地帶湧泉及び噴氣によつて運ばれる熱量は甚だ莫大なるものにして之等は主として岩漿發散の揮發成分によつて岩漿から地表に運ばれた岩漿根源熱によるものと考察した.
  • 固體テルゥルの蒸氣壓と其の蒸氣の分子量の測定
    丹羽 貴知藏
    1940 年 61 巻 8 号 p. 770-774
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 2-Methyl-3, 6-anhydro-l-galactose dimethyl-acetalの單離
    荒木 長次
    1940 年 61 巻 8 号 p. 775-781
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    クロロフォルムに可溶性のメチル寒天質を2%鹽化水素メタノールにて加水分解を行ひ,その反應生成物中より2-Methyl-3, 6-anhydro-l-galactose dimethyl-acetalと決定し得べきメチル糖を單離し得たり.仍りて3, 6-Anhydro-l-galactoseは寒天質分子の構成成分として存在し,他糖とはそのカルボニル基による外, 4位又は5位の炭素原子に結び付く水酸基の何れかにて結合せるものなるべし.
  • ヒカゲヒメジソの精油
    藤田 安二
    1940 年 61 巻 8 号 p. 782-786
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    ヒカゲヒメジソは著者によつて始めて臺灣に産する事が明かになつたものであつて,シラゲヒメジソと形態,成分共に近似し,精油はThymol 32%を含み,この外p-Cymene, Thymol methylether, Bisabolene等を含有する.形態及び成分より見てヒカゲヒメジソは系統上明かにシラゲヒメジソとヒメジソとの間に位するものである.
  • 市川 信敏, 山下 武夫
    1940 年 61 巻 8 号 p. 787-792
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    臺灣全島の山野に落葉性灌木として多量に野生する,タイワンニンジンボク(Vitex Negundo Linn.)の精油につき,その成分を明かにし,且つ其の適當なる利用方面をも知らんと欲したり.
    就中,本油の高沸點部分には苹果皮様佳香を有するセスキテルペン油分存在すること既に,加福,田崎兩氏の研究に依りて明かにせられたるにより特に其の部分の探究に力を致し傍ら,前記報告に於て不明なりし部分を明かとなし,臺灣産天然資源の利用に資せんと欲したり.然して本報告に於て本植物精油中には, l-α-ピネン,カムフェン(?), l-サビネン,シネオール, β-カリオフィレン,及び苹果皮の佳香を有する一種のセスキテルペンアルコール,及び一種のアズレンの存在を確定したり.
    就中,カリオフィレンは本油の主要成分にして,全油の凡そ30%存在す.苹果の快香を有するものは,著者等の研究によればセスキテルペンアルコールにして,第三級アルコールに屬し蟻酸によリアズレンを與ふるを知り得たるのみにして,特徴ある結晶性誘導體並にその化學構造の點に就ては未だその全貌を明となすに至らず.
  • 市川 信敏, 山下 武夫
    1940 年 61 巻 8 号 p. 793-798
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    著者等は臺灣産「タイワンニンジンボク」精油の成分を研究し,これが適當なる利用方面を知らんと欲し,第一報1)に於ては低沸點部に關し報告せり.本第二報にはセスキテルペン溜分以上の高沸點部に就て記す.
  • 鮫島 實三郎, 佐野 〓
    1940 年 61 巻 8 号 p. 799-802
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 燐酸バッファー中に於ける空氣酸化
    篠原 龜之輔
    1940 年 61 巻 8 号 p. 803-811
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    弱酸性(pH約5以上)バッファー中に於けるアスコルビン酸空氣酸化の状態はバッファー作成後アスコルビン酸添加迄に放置する時間の長短によつて異る.其の原因は該バッファー中の夾雜銅及び鐵鹽の沈澱状態に關係あるものゝ如し.
    銅鹽濃度の増大は該酸化初速度を小範圍に於ては直線的に増大する.然し該酸化は中途で停止する.銅鹽濃度の大なる程殘存アスコルビン酸量は小となる.斯の如き事實は第4a式と定性的一致を示す.而してSchümmer1)云ふ如く單分子反應機構には從はない.
    反應液のpH:酸化初速度曲線は酸性領域に於ては初め指數函數的に上昇し, pH約5.5に於て極大點を,而してpH7.6に於て極小點を有する. pH7.6以上に於ては殆んど直線的に上昇する.此の事實は次の事實及び假定によつて説明せられる:アスコルビン酸は先づCu++と錯鹽を作り,以て酸化せられる.Cu++との結合はアスコルビン酸の一價及び二價イオンによつて爲される.之等の濃度はpHに伴つて指數函數的に増大する.該曲線の指數函數的上昇は之が爲めである. pH約5以上に於ては燐酸銅の沈澱が起る.故に一反應物質たる上記イオンの濃度は増大するが,觸媒たる銅イオンの濃度は減少する.從つて該曲線は下方に向つて彎曲する. pH約7.6以上に於ては該二價イオンの濃度が漸く顯著となる.而して該二價イオンは自家酸化を爲し得る.
    該酸化極大點の數値, pH5.5はSrinivasan2)がアスコルビン酸オキシダーゼの燐酸バッファ中の最適點として發表した數値と略々一致してゐる.
  • 五酸化窒素の白金表面に依る熱分解(第一報)
    佐々木 申二, 平木 洋三郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 812-817
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    氣體分子と固體表面とのヱネルギー交換の研究の爲に10-4~10-5mmHgの極低壓に於ける0°の五酸化窒素(N2O5)分子の白金表面に依る活性化確率を測定した.其の結果は次の如し1).
    1. 分解は30°附近に於て測定可能の速度で起つて居る. 400°以上に於ては表面に衝突する分子は全部分解する.
    2. 白金熱表面との1囘の衝突に依る活性化確率は,從來測定された均一反應のそれに比し約5000倍である.
    3. 活性化ヱネルギーは均一反應の値20~24.7kcal.に比し8~13kcal.である.
    4. 化學量論的には均一反應とは異つて五酸化窒素1分子から2分子の永久氣體が生ずるから分解は次の如く起るものと考へらる. N2O5=N2O+2O2
    5. 種々の考察から分解は白金表面上に於て起る表面反應である事を結論した.
  • 五酸化窒素の白金表面に依る熱分解(第二報)
    佐々木 申二, 平木 洋三郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 818-826
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 低温に於ける一酸化窒素と酸素との反應(第一報)
    平木 洋三郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 827-834
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    靜的及び流入法を並用して,液態酸素の温度(-183°)に於ける一酸化窒素と酸素との極低壓反應を研究した.其の實驗の結果明にされた事は次の如くである.
    1. -183°の低温に於て,壓10-3mmHg以下の極低壓に於ても一酸化窒素と酸素とは,水銀の存在し,且凝縮しつゝある硝子壁上に於て非常に急速な反應を起す.之は從來測定された壓範圍に於ける均一反應として求められる反應速度の1029倍も速い反應で均一反應としては説明出來ない.
    2. 反應は2NO+O2=N2O4に從つて起る.
    3. 反應生成物と考へられるN2O4は反應管の器壁上に於て反應を妨害する.
  • 低温に於ける-酸化窒素と酸素との反應(第二報)
    平木 洋三郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 835-838
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    液態酸素の温度(-183°)に於ては,一酸化窒素と酸素とは10-3mmHg附近及び以下の極低塵に於ても反應し,且此の反應は均一反應ではなく,表面反應である事を第一報1)に於て報告した.
    本報に於ては其の表面反應を更に追求した結果-183°の低温で硝子反應管壁に凝縮して生ずる水銀の薄膜が,この反應に對し強い觸媒作用を呈して居る事を發見した.尚硝子自身に於ける表面反應に就ては,幾分は觸媒作用を有するらしいと考へられるが,之を明確に知り得なかつた.
  • (溶液中に於けるスチロルの連鎖重合の機作に關する一寄與) I
    吉田 統一
    1940 年 61 巻 8 号 p. 839-843
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    先に小泉,千谷兩氏は稀薄なる重アルコール及び重水中に於けるスチロルの熱重合を研究した結果,溶媒とスチロルとの間には認め得べき重水素交換反應の起らざる事を發見した.依つて筆者は本實驗に於て更に高濃度の重アルコール中に於けるスチロルの熱重合を研究し,此の反應に依つて生成したるポリスチロル中のHは少くとも實驗誤差の範圍内に於てはDによりて交換されて居らぬ事を確めた.更に此の實驗に於てポリスチロル分子の構造に關して一つの新しい手掛りを得ることが出來た.
  • 吉田 統一
    1940 年 61 巻 8 号 p. 844-848
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    第1報に於て得たる結果を更に高濃度のアルコールを用ひて確め,之等の結果より溶液中に於けるスチロルの連鎖重合の機作に關して論じた.
  • 高杉 直幹
    1940 年 61 巻 8 号 p. 849-854
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    數種の蛋白質よりLevene, Alsberg兩氏の方法により調製せる試料の比較的強力なるAscorbin酸オキシダーゼの作用を有する點より,之等の物質に就き其の吸收スペクトル及び燐含量等の測定を行ひ之等は微量含有するNucleotid型構造を有するものやも知れずとの見地より數種の蛋白質に就き實驗を試みたり.
    本報にては其の實驗方法として本試料の調製法, Ascorbin酸オキシダーゼ力の測定法,並びに其の反應速度恒數の算出法等を述べ,次に5種の蛋白質に就き實驗せる吸收帶,窒素及び燐含量並びにAscorbin酸オキシダーゼ力の反應速度恒數等の結果を記せり. Levene, Alsberg法處理により燐含量を數倍に増加せる試料は同時に酵素の反應速度恒數を増大し且つ吸收スペクトルのヌクレオチード核のものに近似値を示しよくピリヂンヌクレオチードたるCo-Zymaseのそれ等と略同樣なる結果を得たる事を述べたり.
  • 江上 不二夫
    1940 年 61 巻 8 号 p. 855-856
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    Trypaflavin, Rivanolと諸硫酸エステルとの水溶液中に於ける沈澱反應に認めらるゝ,スルファターゼ類との特異性の一致は上記諸化合物中に存する〓なる原子團に由來する.
  • マグネシウムの水に依る腐蝕
    山口 成人
    1940 年 61 巻 8 号 p. 857-860
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) マグネシウム表面に於ける防水性薄膜の證明.
    (2) マグネシウム表面に於ける反應Mg+H2O=MgO+H2の證明.
    (3) 電子廻折法に依る反應速度の研究に對する一考察.
    (4) 大氣中に於ける金屬の防蝕皮膜の生成に演ずる水蒸氣の役割.
  • 上野 誠一, 松田 住雄
    1940 年 61 巻 8 号 p. 861-863
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    魚油,海獸油等は多量の高度不飽和酸を含有することは周知の事實なリ.而して高度不飽和酸は其性質極めて不安定なるものにして變化し易く,從つて酸敗,惡臭等を生ずる原因となる故に之等高度不飽和酸を多量含有する魚油等は其儘にては諸種用途に利用し得ざるものなり.魚油等より高度不飽和酸を分離せんとする試みは既に多數の研究者により、報告せられ學問上の分離法としてリチウム鹽アセトン法及び曹達鹽アセトン法等を良好とす.高度不飽和酸は不安定にして長時日保存する時には酸化重合等の變化を起すものなるは既に明かなる事なれど著者等は以前より鰹油成分に關する研究1)を續行中偶然にも極めて興味ある現象の發生を認め得たるを以つて諸々の文獻を探究せるもかゝる現象に關しては何等の報告をも見出し得ざりしを以つてこれに關して行へる應用實驗をここに報告せんとするものなり.
  • 長井 維理
    1940 年 61 巻 8 号 p. 864-866
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 鳳仙花種子油中に高度不飽和酸成分としてパリナリン酸の確認
    土屋 知太郎
    1940 年 61 巻 8 号 p. 867-869
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    鳳仙花種子油より融點85~86°の高度不飽和酸を單離せり.該酸のカリウム鹽をアルカリ水溶液に於て過マンガン酸カリにて酸化分解し分解生成物を檢索せるに分解生成物中にプロピオン酸C3H6O2,アゼライン酸C9H16O4を確認し,なほ蓚酸C2H2O4の存在を推定せり.又該酸のメチルエステルをアセトン溶液に於て過マンガン酸カリにて酸化分解したるにアゼライン酸モノメチルエステルC10H18O4を確認せり.從つて該酸は〓9:10, 11:12, 13:14, 15:16〓オクタデカテトラエン酸にしてパリナリン酸と同一構造CH3・CH2・(CH:CH)4・(CH2)7・COOHを有することを確め,又アイス脂より分離せるパリナリン酸との混融試驗の結果兩者全く同一化合物なることを確定せり.
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