日本化學會誌
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オキシ化合物を配位せる金屬錯塩の研究(第七報)
アルカリ金屬を中心イオンとする錯鹽の生成
久保田 正雄
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1941 年 62 巻 3 号 p. 214-219

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抄録

(1) 高濃度に苛性アルカリを共存せしめたマンニット或はブリセリン水溶液の吸收を測定し,振動數85×1013-1附近と112×1013-1附近に都合二つの吸收帯を認めた.前者は生成せるアルカリ金屬錯鹽のアルカリ金屬を中心とする結合に基因する所謂金屬錯鹽の第二吸收帯と考へられ,後者は錯鹽中に配位せるオキシ化合物の-OHの酸素原子を中心とする結合に基因するものと考へられる.
(2) エチレングライコール或はエチルアルコールの如き低價アルコールと苛性アルカリとが高濃度に共存する場合にも吸收曲線に不明瞭乍ら前同様二つの吸收帯が現はれ,アルカリ金屬を中心とし,之等アルコールを配位せる錯鹽の生成が認められる.
(3) 葡萄糖水溶液に苛性曹逹を加えると振動數93×1013-1附近と108×1013-1附近に吸收帯が現はれる.此の二つの吸收帯は葡萄糖を配位したアルカリ金屬錯鹽の吸收帯と考へられる.
(4) マンニットのアルコール溶液にソヂウムエチレートを共存せしめた溶液の吸收帯はマンニット苛性アルカリ水溶液の吸收帯と殆ど同じ位置に二つ現はれる.即アルコール溶液中でもアルカリ金屬錯鹽が生成する.
(5) アセト醋酸エチルエステル及びアセチルアセトンのアルコール溶液の吸收帯はソヂウムエチレートの共存することにより吸收帯の中心は長波長部にずれ,而も山が高くなる.之はナトリウムがはいつて錯鹽構造を作る為,吸收帯を現はす原因たるヂケト群に對し,ナトリウム原子が靜電の影響を及ぼす結果不安定となり吸收帯が長波長部にずれるのであり,又錯鹽構造中の酸素原子を中心とする結合に基因する吸收帯が丁度此の吸收帶と重り合つて山が高くなるものと説明される.又振動數85×1013-1附近に新しい吸收帯,即ナトリウムを中心とする結合に基因する吸收帯が現はれる.
(6) ソヂウムエチレートを共存するアセトアニライドアルコール溶液の吸收帯は振動數90×1013-1, 112×1013-1並に123×1013-1附近に都合三つ現はれる.前2者はマンニット其の他の場合と同様に錯鹽の吸收帯であり,最後の者はアセトアニライド固有の吸收帯であるが錯鹽生成の為に弱まつて山が低くなつて居る.

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