日本化學會誌
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高度不飽和酸に關する研究(第五報)
鰛油中しオクタデカトリエン酸C18H30O2の化學的構造に就て
土屋 知太郎
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1942 年 63 巻 6 号 p. 650-653

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抄録

本研究第四報に於て得たるオクタデカトリエン酸C18H30O2(多少モロクチ酸C18H28O2を含む)のアミルエステルをアセトン溶液に於て過マンガン酸カリを以て酸化分解したるに分解生成物としてアヂピン酸アミル及び著量の琥珀酸を得,なほ極少量の揮發性酸(恐らく醋酸)も存在すべきことを認めたり.從つて鰛油中のオクタデカトリエン酸はカルボキシル基の側に=CH・(CH2)4・COOHなる原子團を有し,メチル基の側とカルボキシル基の側の原子團の間に=CH・(CH2)2・CH=なる原子團の存在することを知る.而してオクタデカトリエン酸は二重結合3個を有するC18酸にしてカルボキシル基を含む原子團が=CH・(CH2)4・COOHにしてメチル基の側とカルボキシル基の側の間にある原子團より得らるる二鹽基性酸として殆んど琥珀酸のみを檢出せる事實より推察するに爰に得たる揮發性酸(恐らく醋酸)はメチル基の側の原子團より生じたるものに非らざることを知る.而して原試料中には僅少ながらモロクチ酸を夾雜せるを以て醋酸はモロクチ酸に存在する=CH・CH2・CH=なる原子團の第二次的分解によつても生ずべきも其實測量は夾雜せるモロクチ酸より得らるべき醋酸よりも稍多し.然しながら其量甚だ僅少なるを以て鰛油中のオクタデカトリエン酸中に果して=CH・CH2・CH=なる原子團が存在するものなるか或は爰に得る醋酸はオクタデカトリエン酸アミルの僅少部分が異常の分解を受けて得られしものなるか本實驗に於ては之を確定するに至らざりしが以上の結果より鰛油中のオクタデカトリエン酸の化學的構造は次の孰れかなるべし.
(1) CH3・(CH2)2・CH=CH・(CH2)2・CH=CH・(CH2)2・CH=CH・(CH2)4・COOH
(2) CH3・(CH2)3・CH=CH・CH2・CH=CH・(CH2)2・CH=CH・(CH2)4・COOH
(3) CH3・(CH2)3・CH=CH・(CH2)2・CH=CH・CH2・CH=CH・(CH2)4・COOH

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