日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
放射性指示作用による分析化學(第十一報)
珪酸鹽溶液より其のゲルの生成する過程に於ける微量鉛の収着に就て(其の一)
岸 春雄
著者情報
ジャーナル フリー

1942 年 63 巻 7 号 p. 734-739

詳細
抄録

1. 先づ試料たる珪酸ソーダの純度を吟味し,併せて鐵,アルミニウム,カルシウム等二,三の不純物主要成分の定量を行ひ,之を基として實験に好適なる濃度の試料溶液を調製したり.
2. 上記試料溶液にThB又は之にて指示性を附與したる指示鉛を加へ,此等を鹽酸,硝酸及び王水の3通りにて分解し,析出するゲルに収着するThB又は指示性鉛の量をゲルの側より放射分析的に決定したり,其結果によれば此等同位元素のゲルに収着される量は極く一小部分にして,大部分はゲルより除去されることを知りたり.
3. 洗滌効果と収着量との關係を系統的に調査するに,洗滌開始の初期に當つては効果良好なるも,囘を重ぬるに従ひ少量の鉛はゲルに強く収着されて容易に洗ひ出されずして,洗滌効果に一定の限界あることを知りたり.又,洗滌中のゲル自身の溶解に關しても實験を行ひ,溶解量は微量なることを確めたり.
4. ゲルの乾燥處理を異にしても収着される鉛の量には變化なし.又實験開始時の溶液の酸性度の強弱と鉛の収着量との關係を追求せしが,出發時の酸濃度の如何に拘らず収着量は結果に於て殆ど同程度なり.
5. 鉛鹽の濃度が増加するも一定量のゲルへの収着量は殆ど増加せず一定なり.又鉛鹽の濃度を一定にしてゲルの量を變ふるも同様なり.
6. 収着に及ぼす數種の金屬鹽の影響を吟味するに,金屬鹽が單獨にて共存せると,混合して共有存せるとに拘らず,収着量には變化なくて且つ微量なり.(以上の要旨は本報,其の一,其の二全部に渉る).

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top