日本化學會誌
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米胚芽の酵素(デヒドロゲナーゼ)含有蛋白質に就て(第四報)
田所 哲太郎齋藤 恒行高杉 直幹
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1942 年 63 巻 8 号 p. 1015-1018

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抄録

著者等1)は米胚芽より酵素力ある蛋白質を分離し水溶性もアンモニア可溶牲のものも共にアスコルビン酸オキシダーゼと枸櫞酸デヒドロゲナーゼの兩作用を有することを證明せり.後者は燐含量高くヌクレィン酸に近きものにしてオキシダーゼ作用はCuSO4により促進せられデヒドロゲナーゼ作用はアンモニア處理によりモノヌクレオチードとするも作用を失はぬが故に原物はポリヌクレオチードと推定せり.更に後者の精製を行へるものは無水物中窒素12.97%燐13.29%ペントース19.77%にありてヂヌクレオチードなるアデニン1分子,ニコチン酸アミド1分子,燐酸3分子とペントース2分子よりなり6・H2Oを含むものに一致す.又これを加水分解により燐酸のl/4~1/3を遊離せしむるとき却つて枸櫞酸及びフラクトース・デヒドロゲナーゼ作用顯はるゝことを認めたり.本報告にはこれ等デヒドロゲナーゼに封するMg..の賦活効果, Fe..の同一作用,オキシダーゼとデヒドロゲナーゼの關係,枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用その他基質の存在による阻遏現象等を研究してデヒドロゲナーゼの作用機能を説明すべき次の如き實驗結果等を記載せり.
(1) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用はMg.., Fe..により促進せられ前者の効果は加水分解の進めるものに高く,Br.吸着量に比例す.
(2) 加水分解時間の延長に從ひ,アスコルビン酸オキシダーゼ作用は減退すれどデヒドロナーゼ作用は逆に増大す.然も加水分解を1/10H2SO4規定液にて11時間行へるも酵素力を認め,且つデヒドロゲナーゼ作用は11時間のもの強力なり.
(3) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用はマンノース,フラクトース又はグルコース等の添加により反應速度は減退することを認む.この際ヘキゾースの代りにアルコール又はグリセリン添加を行ふも亦同様に反應速度を減退するが故に共通の-CH2OH基に原因すと考へらる.
(4) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用の反應速度の減退度はグルコースの添加量に極めてよく比例し増加に従つて阻遏度を増大す.
(5) グルコースの阻過度は添加量を一定しデヒドロゲナーゼ量を變化するとき酵素量少きもの程阻遏度大にしてよく反比例するが故に阻遏原因は兩者の結合にありと推定す.

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