日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
Print ISSN : 0369-4208
63 巻, 8 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
  • 温泉の弗素含量(其三)及び二三淡水の弗素含量
    奥野 久輝
    1942 年 63 巻 8 号 p. 871-877
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    さきに報告せる弗素の新比色定量法1)を用ひて引續き北海道内數個所の温泉につきその弗素含量を測定した.測定の結果は多くの温泉に於て其弗素含量は1~2mg/l附近なることを示してゐる.弗素の特に多かつたのは只一つ,湯の川温泉丸鐵旅館の湯で7.3mg/lを含み,第七報2)に述べた川湯温泉とともに,著者の調査した範圍内では他に比し斷然弗素含有量大である.
    淡水の弗素含量は温泉に比し更に遙かに少く, 1l中に百分の數mg程度である.
  • 酸性白土よりの珪酸生成に附隨する微量鉛の收着に就て(其の一)
    岸 春雄
    1942 年 63 巻 8 号 p. 878-882
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    自然物珪酸試驗料たる酸性白土を用ひ,此物の珪酸處理に伴ふ微量鉛鉛の収着研究を次の諸方面より實施せり.
    1) 豫備實驗:先づ試料組成分の定性並に定分量分析を遂行し,實驗に好適なる濃度のアルカリ珪酸溶液を調製せり.
    2) 本實驗:上記試料溶液にThB又は指示性鉛を添加したる後酸にて分解し,析出するゲルに収着する此等元素の量をゲルの側より放射分析的に決定したり.
    使用する酸の種類,鉛鹽の濃度,ゲルの重量等を種々に變化せしめて行ひたる實驗結果を綜合すれば,此等状況の變化如何に拘らず,ゲルに収着せらるる鉛は金體の極く一小部分なることを知り得たり. (以上要旨は本報,其の一,其の二全部に渉る).
  • 酸性白土よりの珪酸生成に附随する微量鉛の収着に就て(其の二)
    岸 春雄
    1942 年 63 巻 8 号 p. 883-887
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 上野 誠一, 辻村 司
    1942 年 63 巻 8 号 p. 888-890
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    満洲國農安産向日葵種子油を粉粹し,エーテル抽出法にて油を製取し其の脂肪酸成分を檢索せり.油の性状は次の如くである.
    全種子油 外殻油 果實油
    比重D154 0.9272 - 0.9265
    屈折率n20D 1.4760 1.4785 1.4765
    鹸化價193.2 178.8 190.1
    沃素價(ウィイス)145.7 128.8 145.6
    不鹸化物(%) 1.46 - 1.25
    全種子油をアルコール性苛性加里にて鹸化し, 5N硫酸を用ひて分解し得たる脂肪酸をメチルエステルとなし減壓蒸溜法に分ち,その各々について檢索を行へり.固體酸としてはミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸の存在を認め,液體酸としてオレイン酸,リノール酸,リノレン酸の存在を認めり.
  • 上野 誠一, 辻村 司
    1942 年 63 巻 8 号 p. 891-892
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    満洲國濃安産向日葵種子油を鹸化後, 5N硫酸にて分解し,混合脂肪酸を得.これをメチルエステルとなし,その116gにニッケル珪藻土觸媒約3gを加へ高壓振盪法に依り,水素初壓30氣壓,温度150~170°C,硬化時間4時間にて硬化を行ひ,減壓蒸溜を行ひ,各溜分の鹸化價より各脂肪酸の百分率を計算せり.其の結果は次の如し.
    パルミチン酸約10%ステアリン酸約86%
    アラキヂン酸約4%ミリスチン酸微量
  • 鮪肝油の性状
    外山 修之
    1942 年 63 巻 8 号 p. 893-896
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    鮪肝油25試料の特數を測定し,また肝油價及び328mμに於ける吸光係數を測定してヴィタミンA含量を求め,肝油價と諸特數との關係に就て考察した.
  • 鮪肝油の脂肪酸成分
    外山 修之
    1942 年 63 巻 8 号 p. 897-904
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    鮪肝油の一試料に就て其の脂肪酸成分を檢索したるに飽和酸の量は大約15%位でパルミチン酸最も多く,其他にはステアリン酸とミリスチン酸とが存在し,なほステアリン酸よりも炭素原子數の多いものも僅か含まれてゐる.モノエチレン系不飽和酸としてはゾーマリン酸(Δ9:10_ヘキサデセン酸),オレイン酸(Δ9:10_オクタデセン酸),エイコセン酸,ドコセン酸及び少量のテトラコセン酸が含まれてゐる。ポリエチレン系不飽和酸ではC22H34O2, C22H32O2, C20H32O2, C20H30O2が主要部を占めC18H28O2も多少含まれてゐる. C22酸に就てしらべた所によると不飽和度がC22H34O2 (F5)とC22H42O2(F1)との間にあるC22H36O2(F4)C22H38O2(F3), C22H40O2(F2)は存在するとしても多くはない.
  • 外山 修之
    1942 年 63 巻 8 号 p. 905-910
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) 目拔肝油10試料の特數を測定し,また肝油價(362~93)及び328mμに於ける吸光係數を測定してヴィタミンA濃度を求め,肝油價と肝油特數との關係を吟味した.
    (2) 酸價大なる試料に就てしらべた所によると,遊離脂肪酸の不飽和度(沃素價)は中性エステルとして存在する脂肪酸よりも著しく大である.
    (3) 目拔肝油の一試料に就て,中性エステルとして存在せる脂肪酸の成分を檢索したるに,飽和酸は大約10%(又はそれ以下)であつて,パルミチン酸最も多く,其他にステアリン酸及びミリスチン酸も含まれてゐる.モノエチレン系不飽和酸としてはゾーマリン酸(Δ9;10_ヘキサデセン酸),オレイン酸(Δ9:10_オクタデセン酸),エイコセン酸,ドコセン酸が含まれてゐる.ポリエチレン系不飽和酸では主要部としてC22H34O2(鰛酸)が含まれてゐる.
  • 外山 修之
    1942 年 63 巻 8 号 p. 911-915
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    沃素價190.6なる糟鮫肝油よりソーダ鹽アセトン法に依りて高度不飽和酸を分取し,之を更に分別してC20H32O2及びC22H34O2を分離した.又更不飽和度の高き部分を檢索したるにC22酸では不飽和度の最も高き部分として得たるものは沃素價425.7であつて, C22H32O2の計算値よりは尚著しく低い.おそらく供試糟鮫肝油は沃素價高き割合にC22H32O2の如き不飽和度の極めて高き高度不飽和酸を多量には含有せざるものと認められる.なほC22酸に就て實驗した所によるとC22H34O2よりも不飽和度の低きC22H36O2 (F4)2 C22H3_??_O2(F3), C22H40O2(F2)は存在するとしても少量である.
  • 二ハロゲンエタンの變角振動に就て
    水島 三一郎, 森野 米三, 宮原 豐, 岡本 康
    1942 年 63 巻 8 号 p. 916-920
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    ClH2C-CH2Br, ClH2C-CH2Iの固體及び液體,並びにBrH2C-CH2Iの固體に對してラマン効果の測定を行つた.その結果と双極子能率測定の結果を併せ考察する事によつて,之等の分子もXH2C-CH2X型の分子と同様,固體に於てはトランス形に,又液體に於てはトランス形と中間形になる事を明かにした.又之等の分子の骨格振動,そのうち特に變角振動に就て論じ,それに基いてClH2C-CH2Clのトランス形分子の逆對稱變角振動の波數を椎定した.
  • 氣態二クロルエタンのラマン・スペクトルに就て
    森野 米三, 渡邊 格, 水島 三一郎
    1942 年 63 巻 8 号 p. 921-923
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    從来の我々の研究により1, 2-二クロルエタンの如き物質の分子は固態に於てはトランス形に,液態に於てはトランス形と中間形になる事が明かにされた.今囘蒸氣のラマン・スペクトルを撮影する事によつて氣態に於ても亦此の二形態の分子が共存する事が實證された.但し同時に行はれたラマン線の強度測定の結果トランス形分子と中間形分子の數の割合は氣態と液態とで著しく異る事が認められた.
  • 立花 太郎
    1942 年 63 巻 8 号 p. 924-928
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    紙に或種の無機物質が附着しておると容易に着火し且つ延燒する様になつて來る.この現象を延燒速度の測定,並びに着火温度の測定によつて研究した所その機構として(1)分解瓦斯の表面燃焼, (2)分解生成物たる炭素の着火温度の低下と言ふ事が考察された.なほ紙の發〓燃燒に對する無機鹽類の影響も研究した.
  • 富田 眞雄, 上尾 次郎
    1942 年 63 巻 8 号 p. 929-931
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    元素分析用線状酸化銅は我國に於ては今迄は殆んど總て外國品を用ひて居た様であるが,著者等は時局に鑑み今囘加工せる又は加工せざる銅線を酸化て之が試製を行つたのである.この際得たる製品は外觀,性状等に於ていづれも大體外國品と同一であり,又實際使用に際しては,その性能に於て完々遜色を認めず,充分實用價植を有する事を知る事が出來た.
  • 藤瀬 新一郎, 立田 晴雄
    1942 年 63 巻 8 号 p. 932-934
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    Kostaneckiのカルコン合成法の一變形としてアセトフェノン類をベンツアルデヒド類をナトリウムエチラート, 60%苛性かりを併用し減壓下に縮合せしめたり.本法を2′-オキシー4′-メトキシー4-ベンヂルオキシカルコン, 2′オキシー4, 4′ヂメトキシカルコン, 2′-オキシー4′メトキシカルコン, 2′, 4-ヂオキシー4′-メトキシカルコン, 2′, 4′-ヂオキシー4-メトキシカルコン2′, 4′-ヂオキシカルコン等合成に施行し常法に比し概して製品の純度収量に於て良好なるを認めたり.
  • 立田 晴雄
    1942 年 63 巻 8 号 p. 935-942
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    o-オキシカルコンを酒精溶液となし燐酸の存在で閉環せしめフラバノンを得る方法につきフラバノン收量と加熱時間,酸の濃度,溶媒たるアルコール類との關係を定量的に檢討をなせり.又o-オキシカルコンをベンゾール,トルオール,キシロール,アニソール等の溶媒中にて加熱及び無溶媒で直接に加熱してフラバノンに至らしめ,その閉環状况を同様に檢討せり.原料は主として2′-オキシー-4′-メトキシ-4-ベンヂルオキシカルコン他に2′-オキシ-4, 4′ヂメトキシカルコン, 2′-オキシ-4′メトキシカルコンを用ひ夫々7-メトキシ-4′-ベンヂルオキシフラバノン, 7, 4′-ヂメトキシフラバノン, 7-メトキシフラバノンに至らしめたり.
  • 馬淵 治
    1942 年 63 巻 8 号 p. 943-948
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • アセチレンより固體觸媒に依るモノヴィニルアセチレンの合成に就て(其一)
    駒田 勤
    1942 年 63 巻 8 号 p. 949-954
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    クロ〓プレーン系合成ゴムに關する研究の基礎として固體觸媒法に就て合成化學上の次の諸條件を研究した.
    1. 觸媒擔體の種類とモノヴィニルアセチレンの生成.
    2. 觸媒の組成とアセチレンの重合.
    3. 助觸媒とアセチレンの重合.
    4. 反應温度.
    5. アセチレンの炭化防止の助觸媒.
    6. 固體觸媒の壽命.
    7. 觸媒の能力を低下する原因の考察.
    8. 擔體の使用量.
    9. 固體觸媒の量とアセチレンの速度との關係.
    10. 鹽化第二銅の影響.
    11. 固體觸媒に依るモノヴィニルアセチレンの生成機構に就て.
  • アセチレンより固體觸媒に依るモノヴィニルアセチレンの合成法に就て(其二)
    駒田 勤
    1942 年 63 巻 8 号 p. 955-962
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    クロ、プレーン系合成ゴムに關する研究の基礎として固體觸媒法に就て合成化學上の條件を研究したが本報は其實驗事項に就て記載する.
  • アセチレンより固體觸媒に依るモノヴィニルアセチレンの合成に就て(其三)
    駒田 勤
    1942 年 63 巻 8 号 p. 963-969
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    モノヴィニルアセチレンを合成する諸條件に就て研究した.
  • アセチレンより固體觸媒に依るモノヴィニルアセチレンの合成に就て(其四)
    駒田 勤
    1942 年 63 巻 8 号 p. 970-975
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    モノヴィニルアセチレンを合成する諸條件に就て研究したが本報は其實驗に關する記載である.
  • 數種の擔体の行爲
    上野 誠一
    1942 年 63 巻 8 号 p. 976-977
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    100氣壓以上の氣壓下に於てニッケル觸媒を用ふる脂油の硬化反應に於ては,觸媒擔體の及ぼす影響はこれを最普通の珪藻土と比較すると木節粘土,蛙目粘土,活性白土,カオリン,滑石,黄土,鞁馬粘土等は何れも大體珪藻土と似た程度の性能を有し,珪藻土よりは稍強力なるもの,稍弱いものもあるが特に取り立てゝ述べる程度ではない.唯活性白土は最も強い影響を與へた.ボーキサイトは結果が珪藻土よりは悪く豫期に反した.ベントナイトは珪藻土よりは稍佳良な影響があるやうであるが,生成後硬化油の外觀が稍亜透明のやうになつて丁度水素添加還元法で脂肪屬高級アルコールを製收する場合に生成物が持つてゐる高級アルコール樣(或はケトン?)の臭氣を有して居たことは注目に價する.それでアセチル價を測定したるにアセチル價は小であつたがその外貌臭氣から高級アルコール類の生成は察知出來る又鹸化價が低下してゐることから不鹸化物(炭化水素)が出來てゐることが認められる.尚ベントナイトを用ひた場合は硬化油と觸媒を分別するときの漏過操作が短時間で濟む得點がある.觸媒擔體としては珪藻土でなくとも本邦諸處に應ずる粘土も差支へなく使用出來ることは興味あり而してベントナイトは我國でも近來諸所に産するからその觸媒擔體としての使用は更に研究し又吟味考慮すべきであると思ふ.
  • オリーヴ油液體酸石鹸乾溜物の硫酸化に就て
    上野 誠一, 安西 林之助
    1942 年 63 巻 8 号 p. 978-982
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) オリーヴ油液體酸石鹸をナトリウムメチラートの存在で常壓乾溜して,石油樣乾溜溜出物を得た.この物質は主としてオレフィン系炭化水素を含み酸性物質を含まず.
    (2) 上記乾溜物を12mm壓下にて減壓蒸溜して140°C迄の溜分と, 140~165°Cまで溜分を得た.此兩溜分は共に主としてオレフィン系炭化水素オクタデセンより成るものと推定せらる.
    (3) 上記兩溜分を試料として硫酸化を行ひ,中和後水に可溶性にして且つ起泡性の溶液とエーテル可溶性の油状部とを得た.
    (4) 水に可溶性且つ起泡性の部分はその性質よりして高級オレフィンの二重結合に硫酸が硫酸エステル状に結合せるものゝ曹達鹽溶液である.この物質は油脂硫酸化の研究に於てオレフィン結合に對する硫酸の作用を考察する上に興味あるのみでなく,その性質が石鹸に似て且つ石鹸よりも酸或は化學藥品に對し耐久性を有するが故に實用的にも浸透劑或は洗滌劑として利用の價値がある.
    (5) エーテル可溶部は恐らく重合物或はアルコールと認めらるゝも精査せず.
  • 特にその二重線と分子内部廻轉との關係に就いて
    八角 正士
    1942 年 63 巻 8 号 p. 983-987
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    單量體メタアクリル酸メチルのラマン効果を液態及び結晶状態に於て觀測した.液態に於いて波數差約10cm-1の3組の二重線が觀測された.是等の線は分子内部廻轉に對する束縛ポテンシャルに由来するエネルギー二重項に依り現はれるのであるとの假定に依り説明せんとする.結晶状態に於けるラマン効果は液態のそれと著しい差違はない.即ち二重線はそのまま存在し,液態の線に對應する線は殆んど總て結晶に於ても現れてゐる.但し多少の波數のずれを伴ふ線がある.相違として擧げなければならない點は波數の小さい所に液態に於て見られなかつた數本の強度の強い線が觀測された事である.是等の線及び結晶に於て線の波數のずれる事から結晶内に於ける分子の排列に關して若干の知識を得る事が出来た.
  • 八角 正士
    1942 年 63 巻 8 号 p. 988-994
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    メタアクリル酸メチルの單量體及び種々な段階に於ける重合體のラマン効果を觀測した.又過酸化ベンゾイルを觸媒とした重合體に就いても觀測を行つた.又單量體及最終重合體のベンゼン溶液に就いてもラマン効果を觀測した.
    結果。(1) 重合體に於いては二重結合に關係する線は全く消えるか著しく強度を減じてゐる.
    (2) 重合が或る程度進行して粘度が大になつてもラマン線は單量體と變らない.
    (3) 中間重合體のラマン線は大體に於いて,單量體のそれよ最終重合體のそれとの單なる重なりである.
    (4) 過酸化ベンゾイルを觸媒とした重合體のラマン線は無觸媒最終重合體のラマン線と殆んど一致する.
    (5) 溶液に於ける重合體のラマン線は觀測されながつた.
    以上の事實より次の結論が得られる.
    (a) 重合はC=C結合が開く事に依り行はれる.
    (b) 重合はラマン線の觀測可能な安定な中間體を生ずる事なく連鎖反應に依り行はれる.
    (c) 過酸化ベンゾイルは重合反應速度を著しく増大するが重合物の構造には著しい變化を與へない.
    (d) 重合體のラマン効果は溶酸中に於て觀測し難くなる.
  • 臺灣産シソクサの精油(其一)
    藤田 安二, 山下 武夫
    1942 年 63 巻 8 号 p. 995-998
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    臺灣産シソクサの精油を採取し,その成分を檢索したるに收率0.13%にて精油を得, d-りモネン大約55%, d-ペリラアルデヒド45%よりなる事が分つた.
    シソクサとはシソの香を有するが為の和名であつて,このものが成分的にもシソと全く同一である事は興味ある事である.
  • 熱擴散恒數とSoret恒數
    廣田 鋼藏
    1942 年 63 巻 8 号 p. 999-1006
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    さきに報告せる熱擴散装置を用ひ,新たに數種の溶液の熱擴散による分離を行はしめ,前報及び本報の實験結果に基いて,
    (1) 計13種(HCl, HNO3, H2SO4, NaCl, KCl, NH4Cl, Na2CO3, NaOH, Na2SO4, CuSO4, KNO3,尿素,蓚酸)の溶液の熱擴散恒數を算出し,
    (2) 熱擴散恒數が溶液にとり可成特色ある量たる事を示し,又この順列とSoret恒數の順列との異同について考察を行ひ,
    (3) HClの分離は濃度に對し極大値を有する事實を指摘した.
    終りにこれらの實験事實を基礎として, Soret效果に對し從來提案せられしVan't Hoffを初め幾多の説の批判及び考察を行つた.
  • 上池 修, 片岡 三郎, 稲葉 正一
    1942 年 63 巻 8 号 p. 1007-1014
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) 靜置した液相に對する瓦斯の吸收を二重境膜説に基き理論的考察を行つた.
    (2) 之れを水-硫化水素系及食鹽-水-硫化水素系に適用し,指示藥法に依て各種の食鹽濃度に於ける硫化.水素の吸收速度及擴散係數を算出して其結果を表示し,若干の考察を行つた.
  • 田所 哲太郎, 齋藤 恒行, 高杉 直幹
    1942 年 63 巻 8 号 p. 1015-1018
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    著者等1)は米胚芽より酵素力ある蛋白質を分離し水溶性もアンモニア可溶牲のものも共にアスコルビン酸オキシダーゼと枸櫞酸デヒドロゲナーゼの兩作用を有することを證明せり.後者は燐含量高くヌクレィン酸に近きものにしてオキシダーゼ作用はCuSO4により促進せられデヒドロゲナーゼ作用はアンモニア處理によりモノヌクレオチードとするも作用を失はぬが故に原物はポリヌクレオチードと推定せり.更に後者の精製を行へるものは無水物中窒素12.97%燐13.29%ペントース19.77%にありてヂヌクレオチードなるアデニン1分子,ニコチン酸アミド1分子,燐酸3分子とペントース2分子よりなり6・H2Oを含むものに一致す.又これを加水分解により燐酸のl/4~1/3を遊離せしむるとき却つて枸櫞酸及びフラクトース・デヒドロゲナーゼ作用顯はるゝことを認めたり.本報告にはこれ等デヒドロゲナーゼに封するMg..の賦活効果, Fe..の同一作用,オキシダーゼとデヒドロゲナーゼの關係,枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用その他基質の存在による阻遏現象等を研究してデヒドロゲナーゼの作用機能を説明すべき次の如き實驗結果等を記載せり.
    (1) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用はMg.., Fe..により促進せられ前者の効果は加水分解の進めるものに高く,Br.吸着量に比例す.
    (2) 加水分解時間の延長に從ひ,アスコルビン酸オキシダーゼ作用は減退すれどデヒドロナーゼ作用は逆に増大す.然も加水分解を1/10H2SO4規定液にて11時間行へるも酵素力を認め,且つデヒドロゲナーゼ作用は11時間のもの強力なり.
    (3) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用はマンノース,フラクトース又はグルコース等の添加により反應速度は減退することを認む.この際ヘキゾースの代りにアルコール又はグリセリン添加を行ふも亦同様に反應速度を減退するが故に共通の-CH2OH基に原因すと考へらる.
    (4) 枸櫞酸デヒドロゲナーゼ作用の反應速度の減退度はグルコースの添加量に極めてよく比例し増加に従つて阻遏度を増大す.
    (5) グルコースの阻過度は添加量を一定しデヒドロゲナーゼ量を變化するとき酵素量少きもの程阻遏度大にしてよく反比例するが故に阻遏原因は兩者の結合にありと推定す.
  • アルカリ水素化物結晶及びタリウムハロゲン化物結晶の菫外領域に於ける吸収スペクトルの理論
    上原 康夫
    1942 年 63 巻 8 号 p. 1019-1024
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    固體の量子力學的理論に基き先に著者2)が求めたるM+, X-型結晶の電子エネルギー準位に對する理論式を用ひて,アルカリ水素化物結晶及びタリウムハロゲン化物結晶の電子エネルギー準位を計算し,夫等の結晶の菫外領域に於ける光の吸收の機構を明かにした.
  • 岡部 建藏
    1942 年 63 巻 8 号 p. 1025-1029
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    緑礬水溶液及び重炭酸第一鐡水溶液に就き,空氣に依る酸化速度並びに老化後の過酸化水素分解觸媒作用の活性度を測定し,更に重炭酸曹達水溶液の酸性度と活性度との關係を求めたり.
  • 岡部 建藏
    1942 年 63 巻 8 号 p. 1030-1032
    発行日: 1942/08/28
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    神奈川縣門川温泉は極微弱なる過酸化水素分解能を有す.其活性度の大いさより觸媒活性體は水酸イオンと沃素イオンなる事を結論す.
feedback
Top