1942 年 63 巻 9 号 p. 1189-1193
ヂフェニルエーテル結合の開裂は一般に容易に行ひ得ないものであるが,著者等は酸化白金觸媒を用ふる比較的強力な接觸環元によつてこの目的を達し得る事を知つた.この反應は常温常壓のもとに行はれ且つ中性反應であるから便利であり,各方面の研究に利用し得る事と考へられる.次に反應機構に關しては數種類の化合體に就て行つた實驗結果より見て次の三階程よりなるものと考へられる.即ちA)ヂフェニルエーテルの二つの核の中で還元に對し抵抗の少い方の核が先づ水素化される.この場合若し抵抗の程度が同一であれば混合物を生ずる. B)次にエーテル結合が切斷される.この場合OH基はベンゾール核の方に附着する. C)殘る一方のベンゾール核の水素化.但し置換基の關係(例へばフタル酸エステルの場合如き)で水素化を受け難き時は反應は進行せずBの階程で停止する.尚著者等は分子中にヂフェニルエーテル橋を有する數種のアルカロイドに豫試驗的に本反應を試みたがこの場合は滿足すべき結果は得られなかつた.
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