日本化學會誌
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ピナコンより異性ヘキサン類の生成(第七~九報)
第七報2, 2ヂメチルブタノル-(3)の接觸還元に伴ふ異性化に就て第八報ピナコンより生成される異性ヘキサンのラマン・スペクトル第九報ピナコンの接觸還元の機構に就て
雨宮 登三
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1944 年 65 巻 6 号 p. 573-581

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抄録

2, 2-ヂメチルブタノル-(3)の加壓接觸還元によつて得られた炭化水素溜分の性質をラマン・スペクトルによつて精査した結果,次の事實が知られた.
(1) 2, 2-ヂメチルブタノル-(3)の接觸還元によつて生成される炭化水素は使用した觸媒によつて著しい差違を生ずる.
(2) 酸化銅・酸化クロム(+酸化バリウム)は異性化を全然進行せしめず,專ら2, 2-ヂメチルブタン(ネオヘキサン)を生成せしめるが,之に反して酸化銅・酸化クロム(酸化バリウムなし)は異性化を完全に進行せしめ,また還元ニッケル及び酸化モリブデンは共に異性化を一部進行せしある.
(3) 先に第二報に於て異性化を完全に進行せしめる如く考へられたニッケル-珪藻土及び二硫化モリブデンの場合にも微量乃至痕跡程度の2, 2-異性體が生じ得る.
ピナコンの加壓接觸還元(第一報)によつて得られた異性ヘキサン溜分の組成を再吟味する目的を以て,夫等のラマン・スペクトルを撮影した結果,主成分は常に2, 3-ヂメチルブタンであるといふ結論が再確認されたが,或る場合には微量の2, 2-異性體が夾雜し得ることが知られた.
ピナコンの接觸還元による異性ヘキサンの合成に關して今日までに行つた結果を總括し,その反應機構を確立した.
(1) ピナコンの接觸還元反應は中間體として2, 2-ヂメチルブタノル-(3)のみを經る型式, 2, 2-及び2, 3-ヂメチルブタノル-(_??_)兩者を經る型式及び2, 3-ヂメチルブタノル-(3)のみを經る型式の3種に分類される.
(2) 何れの中間段階を經るかは觸媒によつて定まるが,常に最終生成物は殆ど又は完全に2, 3-ヂメチルブタンのみで, 2, 2-異性體は譬へ生成されても痕跡程度である.
(3) 最終生成物が中間段階の如何に拘らず常に同一となるのは,ピナコリン轉位竝にその逆轉位が同一觸媒によつて同一程度に促進される故である.

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