日本化學雜誌
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常磁性緩和現象による無機化合物の構造化学的研究(第1~3報) (第3報)2種のシアン錯塩の磁気的性質
長谷田 泰一郎
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1960 年 81 巻 2 号 p. 195-197

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抄録

前二報において無機化合物内の磁気イオン間相互作用の構造化学的な立場からの検討によって “イオン間相互作用の pass”という概念を提出し, 銅およびコバルトの塩化物, 硫酸塩等数種の塩について磁気的測定の結果の整理を試みた。磁気的相互作用 (ことに交換相互作用) が水分子, ハロゲンィオン,硫酸イオン等中心磁気イオンに直接配位している配位子, さらにはその中間に介在しているアンモニウム分子, 1価陽イオン等の相互間の距離, 配向, 結合の様式等に依存するようすを pass の種類別によって分類し得ることを示した。本報では K3Fe(CN)6 と K3Cr(CN)6 の磁気比熱の測定を行ない, 同様 “イオン間相互作用の pass”という観点から検討を行なった。両塩ともそれぞれ別々の Fe3+ または Cr3+ に配位する CN- 分子相互間の相互作用の pass はともに等価であるはずであるから, Fe3+ 相互間と Cr3+ 相互間の相互作用の差は Fe-CN と Cr-CN のそれぞれの結合の様式の差に相当すると期待される。磁気比熱の測定値から K3Fe(CN)6 には強い共有結合性が, K3Cr(CN)6 にははるかに弱い共有結合性が結論される。両塩を K3[Co(CN)6] で磁気的に希釈した塩についての測定結果から, 一般に反磁性イオンによって磁気的希釈を行なう場合の pass の構造を論じた。

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