日本化學雜誌
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生きている緑藻クロレラの酸化還元反応(第5~6報) (第6報) 3価鉄塩水溶液中に懸濁させたクロレラの明所または暗所反応における反応時間と酸化還元電位の変化
矢野 武夫阿部 皓夫田中 祐介竹林 治中村 悦見
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1960 年 81 巻 4 号 p. 601-606

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抄録

われわれは前報において有機または無機の第二鉄塩が全抽出液中または生きたクロレラ中のクロフィルにおよぼす影響について実験ならびに考察を行なった。
本報ではさらに同一条件下における酸化還元電位の反応時間 (明所または暗所における) に対する変化を測定し, クロレラ中のクロロフィルが添加鉄塩におよぼす影響を考察し, 両者の間の関係を検討した。
その結果明所におけるクロレラ懸濁液中の特異な電位降下は有機酸鉄塩の場合のみに特有な現象であることが確認された。この事実から添加鉄塩によってクロレラ中のクロロフィルの酸化還元反応が異なった平衡状態に達し, 光の照射はこの平衡点をさらに異なった状態に移行させることが明らかになった。さらに暗所でクロレラを鉄塩水溶液中に懸濁させたのち。その鉄堪水溶液からクロレラを除き光を照射すると,クロレラで処理しなかった鉄塩水溶液 (単独) に光を照射した場合よりもその電位降下は増大した。この現象はなんらかの還元反応を促進する物質がクロレラから鉄塩水溶液に移行したものと推論される。さらに鉄塩により前処理したクロレラは未処理のクロレラとは違った反亦性を鉄塩水溶液に対して示すことが認められた(暗所)。

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