日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
ハロゲン化アルカリ錠剤法による赤外線吸収スペクトルの異常性(第1報) ジカルボン酸とハロゲン化アルカリとの固体イオン反応
甘粕 治伊藤 〓
著者情報
ジャーナル フリー

1960 年 81 巻 5 号 p. 683-688

詳細
抄録

シュウ酸, マロン酸およびマレイン酸が錠剤法により, ハロゲン化アルカリとイオン反応するという新知見を得た。シュウ酸 (無水物, 二水和物) は塩化ナトリウムおよび臭化ナトリウム錠剤法で酸性シュウ酸ナトリウムー水和物を, また無水物は塩化カリウム錠剤法で酸性シュウ酸カリウムのスペクトルを与える。マロン酸の錠剤法のスペクトルからはマロン酸とハロゲン化アルカリとの complex の生成が認められた。なおシュウ酸とマロン酸のハロゲン化アルカリ錠剤法によるスペクトルはこれら酸とそれぞれのハロゲン化アルカリ (NaCl, NaBr, KCl, KBr, KI) とを溶融したもののスペクトルと一致する。これは錠剤を作製する過程において, これら酸の結晶が加圧下で溶融し, ハロゲン化アルカリとイオン反応することを示す。しかしマレイン酸の塩化ナトリウム錠剤法では微量の水分の共存のもとでのみ, 酸性マレイン酸ナトリウム水和物の吸収が観測される。以上の実験結果から, ジカルボン酸のスペクトルの異常性に関しては, 錠剤法により酸の結晶が溶融するような低融点物質であること, および酸解離定数がイオン反応を起すほど十分大きいことの二因子を考えると説明できる。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top