鳥取県三朝温泉の化学的研究(5～6報) (第6報) 硫化物イオン濃度の変化

抄録

鳥取県三朝温泉の主要源泉30をえらび, 1952年5月から1年間にわたって毎月中旬に採水し, 硫化物イオン (H₂ Sとして表示) 濃度の測定を行なった。一般に, 気温, 泉温の高い夏にH₂S が多く, H₂S と塩素イオン濃度との間には, 相関蘭係があるとはいえなかった。H₂S/C1^- の値も各源泉によって差があり, C1^- と同一の供給源以外からのH₂Sの供給もあることが推定された。C1^-/H₂S の値の大きい源泉には, 硫化物イオンが少なく, H₂Sの多い源泉には, C1^-/H₂S の値が小さい傾向がある。このほかに, H₂S と Mg₂₊, H₂S と鉄, H₂S とケイ酸との関係についても述べた。30源泉の平均硫化物イオン濃度 (H₂S として表示した) は, O.37mg/l, 川水は, O.1₆mg/l, 井戸水は, 0.09mg/l の平均濃度を示した。