日本化學雜誌
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エルドマン塩型錯塩の合成 (第10報)ジニトロ・オキザラト・ジアンミン・コバルト(III)酸カリウムの幾何異性体の合成
久野 栄進
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1960 年 81 巻 5 号 p. 728-732

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抄録

β およびγ-ジニトロ・カルボナト・ジアンミン・コバルト(III)酸カリウム(K[Co(NH3)2CO3(NO2)2])に計算量のシュウ酸を作用させ,それぞれ相当するβ およびγ-ジニトロ・オキザラト・ジアンミン・コバルト(III)酸カリウム(β-K[Co(NH3)2ox(NO2)2],γ-K[Co(NH2)2ox(NO2)2] ・2H2O)を合成した。これらと既知のこの種異性体をα 型として区別するとき,水溶液における極大吸収値はそれぞれ(α)62.70,88.50,120.97;(β)60.85,86.21,116.28;(γ)63.02,90.09,120.48(1013sec-1)でそれぞれ異なる。赤外吸収ではox2-に関する吸収体は(α)1661,(β)1603,(γ)1653(cm-1)にあらわれた。また陰イオン交換樹脂ではβ,α およびγ 型の順で溶離した。以上の結果から,これに対してつぎの構造を与えた。〓この構造はエルドマン塩からα 型が,またシス-K[Co(NH3)2(CO3)2]・H20からβ とγ 型の生成をよく説明できる。水溶液ではこれら相互間の転移はほとんどおこらない。しかし相当するγ およびβ 型K[Co(NH3)2CO2(NO2)2]からK[Co(NH3)2(NO2)4]を経てα-K[Co(NH2)2ox(NO2)2]・H20を導くことができる。この際生じたK[Co(NH3)2(NO2)4]はJorgensenの方法で得たものとまったく一致している。水酸化鉄ゾルによる凝析価は(α)6.5,(β)0.3,(γ)O.7mF/lであった。

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