日本化學雜誌
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滴下水銀竃極におけるユーロピウムおよびテルビウムの還元
岩瀬 秋雄
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1960 年 81 巻 5 号 p. 739-744

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抄録

ユーロピウム(III)およびテルビウム(III)イオンの電流-電位曲線におよぼすPHの影響ならびに還元電子数について検討した。支持電解質として0.1mol/l塩化リチウムを用い,これにゼラチンを添加して(O.01%),復極剤の濃度10-4~10-3mol/l,PH約2~5の領域でポーラログラムを記録し(25℃),つぎの結果を得た。
ユーロピウム(III)の場合はHolleckらによる結果と一致し,Eu3+→Eu2+,Eu2+→Eu0の還元にもとづく2段波がみられ,テルビウム(III)については,NoddackらによるTb3+→Tb2+,Tb2+→Tboの還元に相当する2段波は認められず,水素波と分離した単一波が観察された。これらの半波電位はそれぞれ-0.670V(ユーロピウムの第1波,pH4.0),-1.945V(ユーロピウム第2波)および-1.818Vvs.SCE(テルビウム,pH3.0)である。
ユーロピウムの第1波およびテルビウム波の半波電位はPH約2.4~4.5の間でPHの減少にともなってより陰電位にずれ,ユーロピウム第1波の電極反応過程は可逆から非可逆的なものに,テルビウムのそれは非可逆から可逆的電極反応に変化する。ユーロピウム第2波はpHによる目立った波形の変化はなく可逆的電極反応過程を示す。
限界電流はユーロピウムおよびテルビウムのいずれも拡散律速によるもので,拡散電流定数として,それぞれ1.50±0.01(ユロピウム第1波),3.02±0.03(ユーロピウム第2波),4.49±0.05(テルビウム)を得た。またこれらの値はー近似的にジスプロシウム(III)イオンの無限希釈時における当量伝導率を用いて算出した理論的な拡散電流定数(Eu3+→Eu2++,Eu2+→Eu0およびTb3+→Tb0の還元を仮定した)とよく一致することから,テルビウム波はTb3+→Tb0の還元に相当するものであることが明らかとなった。

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