日本化學雜誌
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ジアコテトラアンミンコバルト (III) 錯基存在下のルミノールの接触的化学発光機構
尾嶋 平次郎
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1961 年 82 巻 8 号 p. 973-979

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抄録

アルカリルミノールの化学発光における [Co(OH2)2(NH3)4]3+ の発光触媒機構を光電測光法により検討した。ルミノール 3×10-6mol, [Co(OH2)2(NH3)4]3+ 2.5×10-5 mol を 1mol/l 炭酸ナトリウム溶液 4.5ml 中に存在させたものを規準発光液とし,発光強度~時間曲線の挙動におよぼす錯塩,ルミノールおよび炭酸ナトリウムの濃度効果,温度効果および阻害剤の効果などをしらべた結果と,コバルト(III)錯塩のアルカリ溶液中の吸収スペクトル的挙動とからつぎのような触媒機構を考えた。 上記アコ錯塩は,アルカリ溶液中でヒドロクソアコ錯塩を経て解離する。その際,配位子として存在した水分子は,
HO-H → HO⋅+H⋅ (I)
のようにラジカル解離する。ここに生じた HO⋅ は,あらかじめ錯基に配位した状態にあるルミノールに作用して "コバルト(III)錯基ルミノラートアニオンーヒドロキシル基" なる遷移状態を経て発光中間体(ルミノールペルオキシド)を形成する。(I)で生じた H⋅ は溶液申の O2 と反応して H202 を生じ,これが残存する錯基によって接触的に分解され,そこに生じた H⋅ が発光中間体の脱水素反応を行なうことによって励起状態のルミノールが生成される。

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