日本化學雜誌
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ラマン効果測定装置の製作
中村 倭文夫
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1962 年 83 巻 10 号 p. 1086-1093,A70

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抄録

従来著者らが使用していたラマン効果測定装置は,東京大学理学部化学教室において,水島および森野によって設計されたものである。その目的はラマン効果の物理化学的研究を主としていた。したがって研究者の研究目的に適合した散光装置がその都度工夫されていて,一般の液体試料用散光装置も付属設備を取り付けるのに都合よく組み立てられていた。すなわち散光装置をとくに明るくし,撮影時間を短縮し,測定能率をたかめるなどの考慮が犠牲にされていたといい得る。
ラマン分析を目的とする場合もっとも必要なことは,測定時間を短縮して能率をあげ,測定の再現性を高めることである。そのためには装置を単一化し,光源および散光装置を明るくしなければならない。
著者は終戦時までラマン効果による研究に携わっていて,このことの必要を痛感していた。きらに写真測光による分析の限度を知って,この不確定さを除き結果を客観化するためには,光電子倍増管によるラマン効果の自働測定装置を組み立て,定量分析を確立することが必須であると考えていた。本研究においては以上の主旨によって,散光装置を改良し,水銀灯を新しく工夫し,分光器を目的に適するように設計した。そしてこれに光電子倍増管による自働記録装置を取り付けこれによるラマン効果測定を実施した。
水銀灯および散光装置はまったく新しい考案によった。分光器は取り扱い容易を旨とし,外国品を多少参考にして設計した。そして従来の分光器にくらべて数倍の明るさのラマン装置を完成した。自働記録装置は自家使用の目的には役立つものを組み立てることができ,四塩化炭素およびトルエンについて十分な分解能をもつチャートを得ることができた。

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