1962 年 83 巻 4 号 p. 493-496,A31
前報において,アロトレオニンのトレオニンへのオキサゾリドン誘導体を経由する転換反応にっいてのべたが,もう一つのオキシァミノ酸であるかフェニルセリンについてこの転換反応を検討した。DL-アロ-β-フェニルセリンから合成したDL-シス-4-エトキシカルボニル-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジンがまったく同一の条件でDL-トランス-2-オキソ-5-フェニル-オキサゾリジン-4-カルボン酸に反転した。こうして得たDL-トランス酸は1N塩酸で加水分解されDL-β-フェニルセリンを与えた。この反転反応もトレオニンの場合と同じく農位炭素原子で反転を起していることは明らかである。ところで,トレオニンの場合にはトランス形とシス形の平衡が6.1:1であったが,β-フェニルセリンの場合には反転が完全におきており,このような差異はおそらく隣接したカルボキシル基とフェニル基の立体障害がメチル基の場合よりも大きいことによると考えられる。
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