1965 年 86 巻 2 号 p. 172-176
イオン交換膜を隔膜とした電解質の透過におけるイオンの移動現象は複雑であり,膜の両側に異種の電解質が存在するときの相互拡散では一般に,イオン交換により透過する割合が非常に大きい。そこで,陰イオン交換膜に対する塩素イオンと水酸イオンとの交換速度について検討する目的で,陰イオン交換膜の一方の側に水酸化ナトリウム溶液をおき,他方の側に塩化ナトリウム溶液をおいたときの塩素イオンの透過速度を測定した。その結果,塩素イオンの透過速獲は塩化ナトリウム溶液の濃度が増加しても,水酸化ナトリウム溶液の濃度が増加しても増大するが,塩化ナトリウム濃度にも,水酸化ナトリウム濃度にも直線的な比例関係を示さないことを認めた。また,塩化ナトリウム溶液中に水酸化ナトリウムを添加すろと塩素イオンの透過速度は低下すろ。これらの結果から塩素イオンの透過速度は膜中での塩素イオンの濃度と密接な関係があると推察された。
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