1965 年 86 巻 7 号 p. 708-713
シクロヘキサンー1,4-ジオンの分子構造は,単純に考えると2個のカルボニル基が対称的に配置されたイス形としてよさそうであるが,低周波でその双極子能率を測定するとかなり大きな値が得られるために,従来,種々と問題になってきたものである。一方ジオンの結晶には,48°C付近から始まる転移現象が誘電率の測定により見いだされており,分子の部分的回転が始まるためと解釈されているが,実験の結果は必ずしも十分といえない。
著者らは,この物質について熱解析,核磁気共鳴吸収,および赤外吸収の測定を行ない,結晶の転移にともなって,明らかにこれらの吸収スペクトルにいちじるしい変化の現われることを見いだした。また転移の機構と分子構造との関係について考察を加えた。
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