日本化學雜誌
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完全に溶解しあう二成分液体からの固体表面への吸着に関する二三の見解
宇津木 弘小林 昭夫
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1968 年 89 巻 12 号 p. 1169-1176

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抄録

相互溶解度が無限であるような系についての固体表面への溶質の吸着等温式をB=X1+X2を仮定した場合(Bは吸着点総数)について統計力学的に誘導し,B=X1+X2の仮定をはずした場合の二成分合蒸気吸着の等温式と比較した結果,(1)B=X1+X2を用いた式は用いない場合の極限式であり実験結果との対応ではまったく同じものであること。(2)求められる表面積値およびそれぞれの成分の吸着熱に関する定数を含む定数は同じ値を与える。(3)式の誘導の過程で定義されるそれぞれの成分の吸着熱に関する定数項は単一成分の蒸気吸着等温式のそれと同じである。(4)B=X1+X2の仮定をはずした場合でもBET定数との類推および実験結果の適応によりB=X1+X2であろうことが液相吸着の場合に認められた。このようにして求められた表面積値は単一成分蒸気吸着からのBET表面積とよい一致を示す。その一致の程度および見かけの吸着等温線と実験結果との致の程度は溶液が完全溶液に近いものほどよい。したがって完全溶液系を用いた液相吸着は粉体の簡易表面積測定法として用いることができる。無限な相互溶解度を持つ系での液相吸着が単分子層についての検討のみでよいであろうことを吸着相の構造から検討した。

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