日本化學雜誌
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吸収帯半値幅の溶媒効果に関する若干の考察
樋口 精一郎田中 誠之鎌田 仁
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1968 年 89 巻 9 号 p. 849-852

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抄録

赤外吸収帯の半値幅は, 使用する溶媒によってかなり大きく変化することが多い。本研究においては, ヨウ化メチルおよびヨウ化メチル-d3 の全対称振動に基づく吸収帯の半値幅を溶媒 10種類について測定し, その溶媒による変動を検討した。その結果, いずれの吸収帯の半値幅も溶媒の粘性率に対して直角双曲線的な相関関係をもつことが見いだされた。このような相関関係は誘電緩和や磁気緩和の理論式から類推して, 分子のランダム回転運動の相関時間が溶媒の粘性率と一次の関係をもつと仮定することにより, 定性的に一応説明することができる。さらに, その他の吸収帯の場合のデータをいくつか示し, 一般には半値幅に影響するのは分子のラソダム回転運動の状態だけでなく, 種々の要因が重なって作用するため, その挙動は大変複雑になること, およびヨウ化メチル分子の場合は唯一つの要因が支配的となったため, そのような単純な挙動になったものと考えられることが結論された。

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© The Chemical Society of Japan
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