日本化學雜誌
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trans-ジアコ-ビス(ピコリナト)ニッケル(II)二水和物,[Ni(H2O)2(pc)2]・2H2O,およびtrans-ジアコ-ビス(ピコリナト)亜鉛(II)二水和物,[Zn(H20)2(pc)2]2H20,の結晶構造
竹中 章郎内海 浩之石原 則幸古崎 昭雄仁田 勇
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1970 年 91 巻 10 号 p. 921-927

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抄録

trans-ジアコ-ビス(ピコリナト)ニッケル(II)二水和物,[Ni(H20)2(pc)2]・2H20,および trans-ジアコ-ビス(ピコリナト)亜鉛(II)二水和物,[Zn(H20)2(pc)2]・2H20,の結晶構造をX線解析により決定した。この2種の結晶錯体はたがいに同型であり,空間群P21/cの単斜晶系に属する単位格子内に上に述べた化学単位を2個含んでいる。それぞれの格子定数は,a=9.725±0.003,b=5.224±0.002,c=17.467±0.006Aおよびβ=124.02±0.04°と,a=9.808±0.002,b=5.221±0.001,c=17.584±0.003Aおよびβ=123.88±0,01°である。配位構造は両錯体とも点対称位に金属原子をもつ,6配位正八面体型である。すなわち2分子のピコリン酸イオンが,そのカルボキシル基の酸素原子とピリジン環の窒素原子で中心金属原子にトランスにキレ一ト配位(Ni-N2.07,Ni-O2.04A;Zn-N2.11,zn-O2,09A)しており,これら5個の原子は金属原子が結晶の対称中心に位置するがゆえに完全な平面を形成している。さらに,この配位面にほとんど垂直な方向には2個の水分子が配位(Ni-W2.10A;zn-w2,17A)している。結晶内には,錯体分子がその配位水と隣接錯体分子のカルポキシル基の配位酸素原子との水素結合でb軸方向に連なり,鎖状にのびているが,さらに格子水が21ラセン軸に沿って他の格子水と水素結合し,同じく6軸方向にジグザグ鎖をつくっている。この2種の分子鎖は,格子水と配位水およびカルボキシル基の配位していない酸素原子との水素結合によって,(100)面に平行にひろがった分子の層を形成している。結晶構造はこのような分子層がおもにvanderWaals相互作用で重なうてできている。

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