日本化學雜誌
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アルギン酸銀の光分解における銀の析出とその量子収率
小西 義昭羽田 宏田村 幹雄
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1971 年 92 巻 10 号 p. 829-833

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抄録

アルギン酸銀薄膜は2537Åの紫外線によって光分解し,多量の銀を析出する。この光分解過程はカルボン酸イオンから銀イオンへの直接の電荷移動として理解されている。このときの光分解生成物の一つである銀の量子収率は,光強度にはあまり依存せず,照射時における湿度と温度とに依存した。すなわち湿度あるいは温度が増加するにつれて,量子収率は増加する傾向を示した。この場合量子収率は0.02~0.06の範囲内で変化した。これらの結果は,光分解初期において,光分解第一次生成物の再結合による逆反応が支配的であることを示している。湿度の影響はこの高分子に対して水が可塑剤的な作用をし,高分子セグメントの熱運動を容易にすることによって,“cage”効果による再結合を抑制するものであるとして説明できる。温度の影響についても高分子の熱運動を考えることによって理解できる。
なおこの報告では,カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリル酸の銀塩の光分解についても部分的に取り扱っている。

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