日本化學雜誌
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芳香族カルボニル化合物の最低三重項状態の寿命
平山 鋭大杉 治郎
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1971 年 92 巻 10 号 p. 825-828

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抄録

アントラセン(A),ピレン(P)のカルボニル化合物である9-CH3CO-A, 9-CHO-A, 1-CH3CO-A, 1-CHO-A, 2-CH3CO-A, 3-CH3CO-P, 3-CHO-Pの最低三重項状態の寿命を,メタクリル酸メチルのプラスチックマトリックス中で常温と77°Kにおいてセン光光分解法を用いて測定した。 77°Kでの値はそれぞれ28.2, 1.6, 15.3, 9.6,-, 29.9, 20.1(単位はmsec)であった。 9-CH3CO-Aはアントラセン誘導体の中で一番長寿命でアントラセンと余り変わらなかった。ピレン誘導体はともにピレンよりはるかに短い寿命を有する。置換基,置換位置によって寿命は大きく異なり,その傾向から寿命と分子構造とに関連のあることがうかがわれた。 Robinson, El-Sayedの無輻射遷移理論と一次摂動論を用いた考察から,寿命は芳香環とカルボニル基との共役の強さに関係するという結果が得られ,実験事実とよく一致することがわかった。寿命とこれら化合物の光化学反応性との関連,最低三重項状態生成の温度変化などについても簡単に述べる。

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