日本化學雜誌
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ニッケルおよび銅表面におけるメタノールの分解反応
安盛 岩雄宮崎 栄三
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1971 年 92 巻 8 号 p. 659-669

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抄録

d-金属およびs-金属の代表とみられるニッケルおよび銅の表面で進行するメタノールの分解反応について,その反応機構および両金属の触媒作用の相違を明らかにするために総合的研究を行なった。
メタノールおよびその関連化合物であるメタノール-d1(CH3OD),ホルムアルデヒドおよびギ酸メチルの分解反応の動力学的研究の結果を,重水素との水素交換反応およびメタノールの吸着特性とあわせて考察した。
またメタノールおよびその分解生成物の吸着状態を赤外吸収および昇温脱離スぺクトルによって調べた。これに加えて,ニッケルー銅合金の触媒活性ならびに冷間加工(捩り加工)の触媒活性に対する効果についても検討した。
メタノールはまずニッケル表面に解離状熊で,また銅表面では分子状にそれぞれ吸着するが,いずれの場合も脱水素反応によってホルムアルデヒドを生成することが知られ,この過程が表面における分解反応の律速段階となることが結論された。
両金属の触媒作用について,もっともいちじるしい相違は吸着ホルムアルデヒドの反応性にあり,ホルムアルデヒドはニッケル表面で水素および一酸化炭素に分解するのに反して,銅表面では二量化反応によってギ酸メチルを生成することが見いだされた。
さらにニッケル表面に強く吸着した一酸化炭素は,分解反応を定常的に進行させる活性点を形成することがわかり,一般に活性点の形成および安定化に対して表面吸着種が大きい影響をおよぼす可能性を指摘した。

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