1971 年 92 巻 8 号 p. 687-694
タングステンに吸着した三原子分子である塩化亜鉛の挙動を電界電子放射型顕微鏡(FEM)により検討した。試料付着部位は塩化リチウムのように暗像となるが,像の観察中にスパッタリングを起こし明暗像が反転する傾向は認められない。加熱して均一に拡げられたFEM像は安定であり,仕事関数は最大で5.12eV, 200-1000°Kにわたり4.75-4.60eVと清浄タングステンのそれにくらべほとんど大差はない。付着によりその部位が暗像を示すFEM像の放射面積および均一なFEM像のそれらをFowlerNordheinプロットのpreexponential項から求められるものと比較し合理的な一致を得た。これらの結果から吸着された塩化亜鉛分子は電気的に負の性質を示すがその程度は余り大きくなく,むしろタングステンからの電子放射を遮げる誘電体的な挙動を示し,印加電圧により分極すること,およびこれらの吸着層を通しての電子放射はFowler-Nordhein式にしたがうとして説明可能であろうことが認められた。
この記事は最新の被引用情報を取得できません。