日本化學雜誌
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高分解能NMRによる縦緩和時間測定とその問題点
田中 信義小坂 研一
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1971 年 92 巻 8 号 p. 681-687

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抄録

同一分子内の等価でないスピンが相互作用をもつときにもそのおのおのの緩和が形式的にはBlochの式で記述されると仮定してそれぞれの縦緩和時間(T1)を定義し,その値を実験によって求めることができる。
市販の高分解能核磁気共鳴分光計を改造して実効磁界の大きさは可聴波変調指数を水銀リレーで急に変えることにより, 1) 直接法, 2) 中間の速さで掃引しながら飽和させた磁化の回復をサンプリングする方法, 3) 速い断熱掃引法,のいずれの方法によってでもT1が測定できるようにした。
1) 直接法では同一分子で化学シフトの異なる個々の吸収線のT1が0.5秒から100秒以上にいたるまで求められ,飽和因子の値を10-3以下から0.99まで変えることは容易である。脱気したクロロホルムのT1は99秒である。この方法では磁場掃引法による二重共鳴のもとでT1を求めることもできる。 2) の方法はT1が数秒よりも大きいとき1)の結果とよく一致する。 3) の方法については市販分光計の実効磁場最大値は10 mgaussを越えないために,必要条件を十分に満たすことはかなり困難で直接法にくらべてT1は小さく求まることがある。

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