1973 年 1973 巻 4 号 p. 635-643
複数の強電解質を含む水溶液中における各イオンの拡散をあらわす微分方程式を試行錯誤的に数値計算を行なう方法によって解き,非平衡の熱力学の現象論的拡散係数の値を算出すると,その値は二種電解質が共存している水溶液について従来報告されている実験値とよく一致することをすでに報告したが,本報においてはこの計算をさらにすすめ,ある条件下におかれたiイオンの輸送挙動をあらわすために,iイオンの見かけの拡散係数と標準電解質pqの拡散係数の比Rt/p9を定義し,イオンの特性がRt/pqにおよぼす影響について検討した。
計算は主としてアニオンを共通とする2種類の強電解質が共存する水溶液を対象とした。その結果,たとえば2種の1-1電解質を混合した場合には易動度の大きい陽イオンの拡散はより速められ言動度の小さいイオンはより遅められること,1-1と2-1または3-1電解質の混合において,陰イオンの易動度が小なる場合多価イオンは逆拡散を起こすことなどが結論された。また実験値または文献値から得たRt/pqの値は計算例とかなりよく一致することを認めた。
この記事は最新の被引用情報を取得できません。