日本化学会誌(化学と工業化学)
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シアノ(ジピリジル)コバルト(II)錯体を触媒とするメタクリル酸メチルの重合
高橋 三視桑原 豊竹田 政民
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1973 年 1973 巻 4 号 p. 814-819

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抄録

[Co(CN)5]3-の配位子の一部を2,2'-ジピリジルで置換したシアノ(ジピリジル)コバルト(II)錯体の水溶液を触媒としてメタクリル酸メチル(以下MMAと略記する)の重合を30℃で行ない,この錯体の重合触媒作用について検討した。シアノ(ジピリジル)コバルト(II)錯体は,水素気相下で乳化剤の存在する場合にはMMAの重合をよく促進するが,乳化剤の存在しない場合には反応の進行は遅く,最終重合率もいちじるしく低い値を示した。この重合系に1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルを添加すると重合の抑制作用が見られ,スチレンとの共重合反応の結果は一般のラジカル触媒のそれと一致した。一方,窒素気相下でもこの錯体は重合反応をひき起こすが,反応の進行は非常に遅い。重合系拠空気,すなわち酸素を存在させると重合はまったく起こらない。また,反応時における重合系の水素圧の変化を測定したところ,重合反応の進行にともなう多量の水素吸収が観測された。以上のことから,本重合反応は,さきに報告した[Co(CN)5]3-触媒による場合と同じく,水素はシアノ(ジピリジル)コバルト(II)錯体触媒と反応してヒドリドシアノ(ジピリジル)コバルト錯体を生成し,さらこにのヒドリド錯体を介して重合の開始に関与するラジカル機構で進行していることが推測される。

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