日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
陽イオン性界面活性剤第四級アンモニウム塩の水溶液の示す異常現象について
武藤 信也松本 義雄伊能 敬目黒 謙次郎
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 1974 巻 12 号 p. 2246-2249

詳細
抄録

陽イオン性界面活性剤である第四級アンモニウム塩のあるものはその水溶液の電気伝導度を測定するとミセル形成臨界濃度(CMC)付近で一つの極大値をもつことが知られている。このような現象を異常現象とよんでいる。そこでテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムグロリド,オクタデシルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロリドおよびジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドの水溶液の電気伝導度を測定し当量伝導度-濃度の平方根曲線を作成したところ,テトラデシルジメチルベソジルアンモニウムクロリドは通常の界面活性剤水溶液と変らぬ物理化学的性質を示したが,後者の二つは明瞭な異常現象を示した。すなわち,オクタデシルジポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロリドはグラフ上に一つの極大値をもち,そしてジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドの方は界面活性剤水溶液の低濃度領域において異常に高い電気伝導度を示した。このことは明らかに異常現象の存在を暗示している。このような異常現象はオクタデシルジポリオキシエチレソメチルアンモニウムクロリドについては界面活性剤イオンのN原子のまわりに結合している1個の長鎖アルキル基と2個のポリオキシエチレソ基の立体障害のために,またジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドについてはN原子のまわりに結合している2個の長鎖アルキル基の立体障害のために対イオンの固定が起こりにくくなり解離度が増加するために生じてくるものと思われる。すなわち,対イオンの固定の少ない界面活性剤イオンのみが集合した多電荷型の会合体ができるため,電気伝導度が増加するものと考えられる。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top