日本化学会誌(化学と工業化学)
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アルカリ溶液中亜鉛の不働態化におよぼす温度の影響
山下 嗣人野中 誠一
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1974 年 1974 巻 12 号 p. 2287-2290

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抄録

濃厚亜鉛酸アルカリ溶液中における亜鉛のアノード挙動におよぼす温度の影響を不働態化現象およびアノード分極曲線の測定によって検討した。
不働態化時間は温度の上昇とともに増加したが,とくに50~56。Cの間で不働態化時間に大きなピークを認めた。極大値の生ずる温度は電流密度の増加にしたがって順次高温側へ移行した。塩化物イオンは上記亜鉛の不働態化に対してほとんど影響を与えない。アノード分極曲線の限界電流密度は温度の上昇とともに増加し,アノード溶解反応速度の捉進が示された。温度依存性はとくに15~50。Cの範囲において大きい。
アノード表面に生成する不働態被膜は50。C以下の温度で黒色であったが,50。C以上で青色に変化した。不働態化時間に極大値が生ずることや極大値の温度が電流密度によっても影響を受けること,さらにアノード電位からの考察ならびにアノード被膜が黒色から青色に変化する事実などから,亜鉛の溶出過程,溶液およびアノード被膜の性質が50。C前後の温度で変化するものと推定された。

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