日本化学会誌(化学と工業化学)
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大気浮遊塵中の95Nb/95Zr比による複数の核爆発からの放射能汚染の分別検出法
湯川 雅枝鎌田 博佐伯 誠道
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1974 年 1974 巻 2 号 p. 263-268

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抄録

核分裂生成物の一つである95Zrは生成後約500日で娘核種の96Nbと放射平衡に達し,9sNbと9sZrの放射能比は平衡値2.18になる。この平衡に達する以前に,96Zrの崩壊とSGNbの生成の状態,すなわち,9SNbと95Zrの放射能比を知れば,核分裂生成物の年令を推定することが可能であり,9SZr-9SNbの組み合わせば,平衡に達するまでの期間が適当に長いことから核爆発実験時期の推定用いられてきた。
本研究においては,環境試料の一つである大気浮遊塵に対する核分裂生成物による汚染の時期と程度の推定にこの方法を利用しようと試みた。1970年10月14日,1971年11月18日,1972年1月7日および1972年3月18日に行なわれた一連の中国核爆発実験の生成物で汚染されている大気浮遊塵を対象にそれぞれの核爆発実験の影響の度合を分別定量することについて,かなりの精度で行なうことに成功した。核爆発時期未知の核分裂生成物の年令推定に関しても,核分裂後100目以内であり,適当な期間をおいて,同一試料について少なくとも2回の測定を行なえば,他の時期の生成物と区別して推定しうることがわかった。

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