日本化学会誌(化学と工業化学)
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結晶性フッ化黒鉛の生成とその結晶構造
高島 正之渡辺 信淳
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1975 年 1975 巻 3 号 p. 432-436

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抄録

結晶性フッ化黒鉛の生成過程について二三の炭素材質のフッ素化反応過程を顕微鏡観察およびX線回折より検討し,さらにフッ化黒鉛の結晶構造に関する知見をX線写真法および電子線回折法などにより得た。結晶性フッ化黒鉛の最適生成温度はフッ素圧100~350mmHg下において580~610 Cである。原料炭素材質の結晶性や純度が低い場合には,この温度では生成したフッ化黒鉛の分解反応が起こり,結晶性のよいフッ化黒鉛は得られない。高純度天然黒鉛(マダガスカル産)のフレイク状のものが最適である。フッ素化反応は黒鉛層構造におけるedge Planeから進行し,約10時間の反応でフッ素化は完了するが,結晶性のすぐれたフッ化黒鉛を得るには,その後10時間以上反応条件下に保持する必要がある。フヅ素圧100mmHg下では全反応時間は48時間以上を要した。ブレイク状フッ化黒鉛は雲母状の外見を有し,薄い平板状に容易にヘキ嘉する。フッ化黒鉛は積層構造であるが,一定の層間距離で積層しつつも積層方向(ご軸)の結晶格子の規則性はほとんどなく,いわゆる乱層構造である。層間距離の実測値は5。84Aである。層平面内の二次元格子は六回対称で,その格子定数は2.54Aである。層平面を形成する炭素の骨格はジグザグ構造で,炭素一炭素問結合距離1は1. 54 A,炭素-フヅ座間結合距離は1.41Aで炭素間結合角は約111である。理想結晶では六方最密充テンの積層構造をとり,6軸の格子定数は5.56Aで,単位格子を形成する原子数はCが2固,Fが2個で,比重の計算値は3.39となる。実測値は3.1 0.1であった。

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