日本化学会誌(化学と工業化学)
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PVA-PVC系繊維の熱分解
中西 洋一郎進藤 昭男
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1975 年 1975 巻 3 号 p. 527-533

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抄録

エマルジョン紡糸により得られたPVA-PVC系繊維ポリクラールと,PVA-PVC粉末混合試料の熱分解を80 Cから600 Cまでの範囲で行なった。アルゴン気流中では,PVC粉末,PVA-PVC粉末混合試料はともに180~185 Cから重量減少を始めるが,ポリクラールは45~40。C低い140 Cから重量減少を始めることがTG曲線からわかった。数段階の温度に加熱したポリクラールの試料の元素分析,あるいは加熱中に発生する塩化水素ガスの測定結果は,塩素原子が減少し始める温度,塩化水素ガスがいちじるしく発生し始める温度は,水素原子,酸素原子の減少し始める温度よりも35~70。C高いことを示した。赤外吸収スペクトルではYOH,Ye-0, C-Cユによる吸収の強度低下が,各構成元素の減少する温度範囲でみられた。空気気流中では285。C以上,アルゴン気流中では310。C以上に加熱したポリクラールでは,320 C以上に加熱したPVCと塩化水素ガス中で300 C以上に加熱したPVAにみられるカルボニル基あるいは芳香族などによる吸収がみられた。
これらの結果から,ポリクラールの重量減少開始温度の低下は,分極により部分的に荷電した状態にあるPVCがPVAの脱水を促進するためと考えられた。

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