日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
セルロースの熱分解
万木 正岩田 ひろ大熊 道男
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1975 年 1975 巻 4 号 p. 733-737

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抄録

天然および再生セルロースの熱分解における微細構造の影響を知るため,両セルロースから調製した結晶,無定形(非晶)試料につき,400℃までの加熱過程の変化をX線回折,赤外吸収,熱分析(DSC,TGA)の手段で測定,比較検討しつぎの結果を得た。(1)結晶,無定形試料ともに加熱過程での融解,再結晶化など構造変化は認められず,熱分解は結晶あるいはガラス状態のまま固相反応として進行する。(2)結晶,無定形試料の分解挙動はいちじるしく異なり,無定形試料は比較的低温の130~140℃から徐々に連続的に分解し,300℃前後で初期反応を終るが,結晶試料は300℃付近までほとんど変化せず,300~350℃で急激に分解する。(3)再生セルロース結晶の熱分解開始温度は天然セルロース結晶より10~20℃高く,これは格子構造の安定性の違いに基づくと推察した。(4)天然および再生セルロースから得た無定形試料の分解挙動には相違が認められなかった。

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