日本化学会誌(化学と工業化学)
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ホスホリルトリアミドのマンガン(II)およびカドミウム(II)錯体の熱分解生成物
熊谷 直昭間瀬 判蔵
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1976 年 1976 巻 12 号 p. 1831-1837

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抄録

ホスホリルトリアミドの錯体,[Mn{PO(NH2)3}2]Cl2とCd{PO(NH3)3}Cl2の熱分解生成物をX線回折,赤外吸収スペクトル(IRスペクトル),ペーパークロマトグラフィーおよび化学分析などにより検討した。
5x10-2mmHgの真空下で加熱すると,140~200℃付近ではMn,Cd錯体はそれぞれNH4Cl,NH4CdCl3などを副生して分解し,P=N-PおよびPNH-P結合の骨格からなる重合度2~5程度の縮合物のオリゴマーが主として生成した。この縮合物はX線的に非晶質で水に難溶である。ついで300~700℃付近では両錯体ともRN-PおよびP-NH-P結合骨格からなる高度に橋かけした縮合物が生成した。この縮合物はX線的に非晶質で,水,6NH2SO,(室温)および種々の有機溶剤に不溶である。大気中でこれらの錯体を加熱すると,300~400℃付近ではいったんP=N-PおよびP-NH-P結合からなる橋かけ縮合生成物が主として生成するが,Mn,Cd錯体それぞれ600℃,500~600℃付近から大気中の湿分によりそのPN-PおよびP-NH-P結合の水和開裂が起こることが認められた。その結果,Mn錯体では最終的に1000℃でMn2(P4O12)が生成し,これに対しCd錯体では500~600℃付近でX線的にCd18Cl2(PO4)6の中間的生成が認められ,最終的に1000℃でCd2P2O7,が生成した。
これらの錯体の構造と熱分解生成物との関係について考察した。

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