アソトラキン(AQ)の塩素ガスによる直接塩素化反応の詳細については明らかでない。著者らは高速液体クロマトグラフィー(カラム:Zorbax-SilR,溶出液:ペンタン)により26種のクロロAQがほぼ完全に分離できることを見いだし,この分析法を用いて反応径路,配向性など塩素化反応の詳細を明らかにした。
ヨウ素あるいはパラジウム塩を触媒として用い,濃硫酸中100℃付近でAQと塩素ガスとの反応を行なうと各種のクロロAQの混合物が得られる。AQのα-位はβ-位よりも,濃触媒存在下では約5倍,Pd(OAc)2触媒では約10倍反応しやすい。塩素化により生成する1-クロロAQはAQよりも2・1倍速く塩素化され,AQが塩素化されるとざらに塩素化されやすくなることを示している。クロロAQの塩素化では置換基-Clのオルト,パラ配向性が優先する。なお配向性は触媒によりやや変化する。塩素化が進み二置換,三置換となるにしたがい,さらに塩素化されやすくなるため,反応は途中で停止することなく原料から四置換体までの混合物が得られてくる。なお,この反応条件下ではAQの一つの環には2個までレゆ塩素化は起こらず,四置換体が最終生成物となる
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