日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1977 巻, 1 号
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  • 米山 俊夫, 篠田 耕三
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親水性有機化合物一水の系に無機壇を添加すると溶解性が減少することが知られているが,溶解性が増大する場合はあまり知られていない。本研究では2-ブトキシエタノール(n-C4H9OCH2CH2OH)一水および1-ブタノールー水の系に無機塩とくに溶解性が増大すると思われるチオシアン酸塩を加えて溶解性におよぼす効果を調べた。2-ブトキシエタノールー水の系にNaSCNを添加すると溶解度は増加して2液相領域は縮少する。1-ブタノールー水の系ではCa(SCN)2の添加量を増していくとそれまで存在しなかった下の臨界温度が現われ,ついには完全溶解する。このような溶解度の増加ば,水の2-ブトキシエタノールあるいは1-ブタノール相中への溶解度が増加したためである。また溶解性を増大させる塩は有機化合物相中に溶け込みやすく,溶解性を減少させる塩は水相中に溶け込みやすい。
  • 黒岩 茂隆, 小笠原 真次, 高橋 泰信, 藤升 広子
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 4-8
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水に難溶性の染料が,非イオン性界面活性剤ミセル中へどのような状態で可溶化するか知るために,ポリオキシエチレン基の平均重合塵約9.3のドデシルエーテル25%水溶液を用い,これに数種のアミノ,アントラキノン系分散染料をそれぞれ可溶化した溶液(1.2x10-44mol/l)の流動二色性を測定し,種々検討した。その結果,1,4-ジアミノおよび1,4-ビス(メチルアミノ)アソトラキノソはミセルの親水部に,分子軸をミセルの円筒軸方向に向け(<45°),しかも速度勾配の増大とともに,分子面がより水平に傾くような状態で可溶化すること,一方,1一アミノおよび1-(メチルアミノ)アソトラキノンはミセルの疎水部に,分子軸がミセルの円筒軸と直角に近い角度(>45°)をとって可溶化することがわかった。また界面活性剤の濃度が20%以下,すなわち溶液が負の流動複屈折を示す濃度領域では,どの染料の場合も二色牲を示さないことから,可溶化した染料が流動下において,ミセルとともに配向し二色性を示すようになるには,ポリオキシ出チレン基相互の結合による網目構造の形成が必要条件であることを認めた。
  • 乾 智行, 上田 孝, 新宮 春男
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    平均粒子径1.3μの鉄粉末を6%のO2を含むHe気流中,300~700℃で酸化し,その速度過程をミクロ熱テンビンを用いて測定し,前報2のひげ結晶成長速度と比較検討した。
    O2吸収量の時間に対する変化は,初期数分間の速い吸収のあと2時間以上にわたりゆるやかに増加する単調な経過を示し,その増加速度はElovich式 d(ΔW)/dt=kexp(-α(ΔW))にしたがった。初速度kは480℃の上下でそれぞれ24.5,9.7kcal/molの温度依存性を示した。この境の温度は,ひげ結晶成長量が極大(全酸素吸収量の4%に対応)となる温度と一致し,この温度以上で酸化物層形成速度の温度依存性が増すため,ひげ結晶成長反応が起こるひげ結晶根本部への鉄イオンの供給速度が減速されると考えられた。酸化物層の厚さ(y)の増加速度は,ひげ結晶の長さ(l)の伸び速度と同様,対数則にしたがったが,減速係数(α)の負の温度依存性は,yについてはあるがlについてはほとんどなく,結果として低温部ではlの伸びの方が望の増加より上まわった。
    以上の事実に基づき,鉄イオンの供給は,酸化物層形成反応相へは体拡散が主と考えられるのに対し,ひげ結晶根本部へは転位拡散のような短回路拡散によっていることが示唆され,これは同時に,前報のひげ結晶の根本成長機構を支持した。
  • 影山 俊文, 酒井 健一, 横山 盛彰
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    白金電極におけるピロールの電気化学酸化を0.1N硫酸,Britton-Robinso血緩衝液および0.1N水酸化カリウム水溶液中で行なった。
    酸化生成物はpH>10では4-ピ律リン-2-オン,5-(2-ピロリル)-2-ピロリジノン,2,5-ビス(5-オキソピロリジソ-2-イル)ピ博一ルおよびピロール黒が,そしてpH<10ではピロール黒が得られた。
    0.1N水酸化カリウム中におけるピロ一ルの酸化電位はHg/Hgo参照電極に対して+0.9Vであった。定電位電解中の陽極液のポーラログラムを滴下水銀電極で測定した。この結果まず4-ピロリン-2-オンおよび5-(2-ピロリル)-2-ピロリジノンが生成し,ついで2,5-ビス(5-オキソピロリジン-2-イル)ピロールが生成することが認められた。 
  • 吉沢 四郎, 宮崎 義憲, 片桐 晃
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    充てん複極槽では,充てん粒子間が単位電解槽となって電解が起こるので,有効電極面積は非常に大きく,極間距離が短くなり,反応物がすばやく電極面に移動できるため,希薄溶液を電解するのに適し~ている。したがって,この電解槽を廃水の電解処理に応用することができる。
    本研究では,充てん複極槽による電解方法が可能となるための条件や電解槽特性を明らかにすることを目的として,炭素粒子を充てんした充てん複極槽を用いてK2CrO4およびKCN水溶液の電解処理を行ない,電解槽特性におよぼす充てん粒子の種類,大きさ,および印加電圧の影響について検討した。CrO42-はCr(OH)3に還元されて粒子上に析出した。CN-はCNO-噌に,あるいはさらにCO2およびN2に酸化された。充てん粒子としては接触抵抗が大きな活性炭を使用する必要のあることがわかった。活性炭粒子を充てんした電解槽で電解を行なうと,通常の電解槽にくらべて反応速度は大きく,電力効率が高いという結果が得られた。また,印加電圧が大きくなるにつれて,反応速度は大きくなったが,電力効率は低下した。粒子の大きさ,および印加電圧に関する最適条件は溶液の濃度に依存するものと思われる。`
  • 小山 実
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    縮合により高分子量化した極限粘度0.29のリグニンスルホン酸(LSA)を用い,モンモリロナイト(Mtm)希薄懸濁液に対する凝集作用を懸濁液の粘度を測定する方法で調べた。MtmはNa+,H+,Ca+およびAl3+を交換性陽イオンとする試料を用いた。
    実験の結果,Na-,H-,およびCa-モンモリロナイト系懸濁液の還元粘度,ηsp/c,はLSAの添加により媒質の無機電解質がつぎに示す濃度より高いとき増大したが,低いときには低下した,Na-,H-およびCa-モンモリロナイトの各系それぞれNaCl0,06N,HCl0.01NおよびCaCl20.003N。Al-モンモリロナイト系懸濁液のηsp/c値は媒質のAlCl3濃度の広い範囲でLSAの添加により低下した。Na-,H-,およびCa-モンモリロナイト系懸濁液のLSAによるηsp/c値の増大はLSAとMt組粒子のedge面との間にedge-LSA-edge型結合が生成し,懸濁液の流動抵抗が増したためと,またηsp/c値の低下は分散化作用の結果と解釈された。Al-モンモリロナイト系懸濁液のηsp/cの低下は,媒質のAlcl3濃度が1×5-5N以下のときはLSAによる分散化の結果であるが,0.001N以上の条件のときはMtm粒子nat面とLSAとの間に,流動抵抗を低下させる丑at-LSA-Hat型の結合が生成しそれが寄与しているものと考えられる。
  • 野路 雅英, 喜谷 喜徳
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンジアミン(en)とジカルボン酸(H2L)を混合配位子とするCu(II)錯体の平衡定数を分光光度法により求めた。用いたジカルボン酸はマロン酸,コハク酸,マレイン酸,およびフタル酸である。enおよびジカルボン酸とCu(II)を適当な濃度比で混合した溶液のpHを調整し,イオン強度0.5,25℃でスペクトルを測定した。平衡定数の算出はWattefsらの方法にしたがった。平衡定数としてkp(=[Cu(L)(en)][en]/[Cu(en2)][L]),Kq(=[Cu(L)2][en]/[Cu(L)(en)][L],K8(=[Cu(L)2]・[Cu(en)2]/[Cu(L)(en)]2),およびKtn(=[Cu(L)(en)]/[Cu][L](en))を求めた。混合配位子錯体の安定性の指標となるpk8の値は,マロン酸(1.56),コハク酸(1.04),マレイン酸(1.18),フタル酸(1.71)となりジカルボン酸を含む混合配位子錯体の安定性は,フタル酸>マロン酸>マレイン酸>コハク酸の順序になった。
  • 鎌田 政明, 大西 富雄, 坂元 隼雄
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    九州地方の低汚染または未汚染河川水中のカドミウム含有量を求め,亜鉛含有量と対比しながら考察した。
    (1)普通の河川水中のカドミウム含有量は全域54河川,117試料でo.054μg/l(幾何平均)で亜鉛にくらべ河川間の差異は少ない。
    (2)カドミウムで汚染された坑内水およびその影響をつよく受けた河川水ではCdとZn含有量との間に強い正の相関があり,Zn/Cdは150である。しかし普通の河川水においてはこの二つの元素の含有量の間にはあまり相関が認められない(相関係数+0.282)。
    (3)カドミウムを含む鉱床地帯の河川水中のカドミウムは,当然鉱床に由来するが,普通の河用水中のカドミウムは,もともと降水中に含有されているカドミウム由来のものも多いと推定される。
    (4)流域が都市化したり,自動車交通量が増加したりすると河川水中の亜鉛含有量は増加するが,カドミウム含有量には大きな変化が認められない。このようにカドミウムと亜鉛はつねに関連させながもら考察をすすめる必要がある。
  • 後藤 正志, 加藤 昌男, 石井 大道
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電極にパルス電位を印加し,そのさい流れる電流を半積分した量mを時間tに対して記録することによって,酸化還元電位の接近した可逆または準可逆電極反応物質と非可逆電極反応物質との混合物を同時定量する方法について研究した。ここで電流i(t)の半積分m(t)とはつぎのように定義される量である。 例として吊下水銀滴を指示電極に用い,1.0mol/lKCL中のZn2+とNi2+との同時定量について検討した。可逆または準可逆物質Zn2+単独の場合には,tがパルスの終了する時間らでの電流の半積分値m(tp)は20~100μmol/l範囲においてZn2+の濃度に比例し,t=2tpでの半積分値m(2tp)は濃度に関係なく0となった。また非可逆物質Ni2+単独の場合にはm(tp)およびm(2tp)値はともにNi2+の濃度に比例し,20~100μmol/l範囲のいずれの濃度においてもm(2tp)値はm(tp)値の半分の大きさを示した。以上のことからZn2+とNi2+との混合溶液についてm-t彦曲線を記録し,m(2tp)値から両者の総量を知り,m(2tp)値からNi2+の量を知ることによって両者の同時定量が可能であることが明らかになった。固体平面指示電極の例としてグラシーカーポンを用い,0.5mol/lHClO4,中でのCu2+とO2との系についても同様な検討を行なった。
  • 丸山 正生, 掛本 道子, 村上 和雄, 石井 利光
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電気化学的手法としてウォール・ジェット円板電極を用いた直流およびバルスポーラログラフィーを高速液体クロマトグラフ用検出器とレて利用した。作用電極にグラッシーカーボン,対極に白金,参照電極として飽和カロメル電極を用いた三極系によるポーラログラフ検出器を試作し,その応用を試みた。電解還元反応の例としてニトロベソゼン・電解酸化反応の例としてアニリンを測定試料に用い,検出器として用いる場合の基礎i的事項について検討した。試作した本検出器は1×108(1.2×10-9~1×10-6g)の範囲で濃度と限界拡散電流の間で直線性があり,最小検出量はニト戸ベソゼンの場合1.2×9-9g,アニリンの場合,1.9×10-9gであった。モニターとして用いた紫外検出器(254nm)と比較して同程度の高い馨度が得られた・本検出器は種々の電気化学的活性物質の高感度測定に適し,応用例でも示したように多成分中の特定成分の選択的検出,定量に有用である。
  • 鍵谷 勤, 武本 勝雄
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩素共存下の塩化ビニルの紫外線酸化分解反応を,高圧水銀灯(100W)を用いて,室温で行なった。低濃度の塩素共存下における塩化ビニルの光酸化反応においては,中間体としてクロロアセトアルデヒド,ホルムアルデヒドおよび塩化ホルミルが生成した。高濃度の塩素共存下では,生成気体中にクロロアセトアルデヒド,クロロアセチルクロリドおよび1,1,2-トリク質質エタン(TCE)の生成が認めら。れた。これらの中間体は長時間の照射によって消滅した。塩化ビニルの光酸化分解速度は塩化ビニルに対する塩素のモル比(Cl2/VC)の増大とともに大きくなり,Cl2/VC<2のときの塩化ビニルの光酸化分解速度がCl2TCE<1のときのTCEの光酸化分解速度よりも小さく,C2VCgt;>2rのときにはCl2/TCEgt;>1のときのTCEの光酸化分解速度とほとんど等しくなった。塩化ビニルの変換率に対する塩素の変換率の比は1より大きく,塩化ビニルの変換率が大きくなるにつれてこの比は小さくなった。一方,暗所で塩化ビニルおよびTCEに二酸化塩素を添加しても両者ともまったく分解しなかったが,これに紫外線を照射すると両者ともいちじるしく分解した。また,微量の塩素による塩化ビニルの光酸化分解反応はオゾンを添加することによって一層促進された。これらの結果に基づいて,塩化ビニルの光酸化分解反応における塩素の役割について考察した。
  • 秋山 文紀, 寺島 清隆, 松田 実
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    4種のジクロロシクロヘキサン,すなわち,かtrans-1,2-体,cis-1,2-体,trans-体,およびcis-1,4-体を塩化アンチモソ(V)と反応させたところ,cis-1,2-体では原料は消失するが,異性体は生成せず,他の3種の異性体では異性化が起こることを見いだした。このさいの異性化率は1,4-ジグロロ体の反応の方がtrans-1,2-体の反応より高いことがわかった。異性化で得られる異性体のうち1,3-ジクロロ体と1,4-ジクロロ体の合計中のcis-1,3-体,cis-1,3-体,cis-1,4-体,およびcis-1,4-体の分率は出発物質や反応時間に依存しないが,反応温度および溶媒には依存することがわかった。異性化の機構としてはクロロニウムイナン中間体を経る機構よりカルボニウムイオソを経る機構の方が妥当と考えだ,以上の異性化の結果をシクロヘキセンの塩化アソチモン(V)による塩素化で副生する1,3-および1,4-ジクロロ体の分布と比較した。
  • 山本 二郎, 坂本 忠行, 楠 和幸, 梅津 雅裕, 松浦 輝男
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Wallach転位における-連の研究として,プ・トソを付加する置換基をもったアゾキシ化合物の研究を行ない,つぎの結果を得た。(1)α-[3]アセトアミドアゾキシベンゼン[1],α-[3]およびβ-かアゾキシベンゼンカルボン酸メチル・エステル[4]およびα-ρ(ジメチルアミノ)アゾキシベソゼンN-オキシド[5]のWallach転位は,硫酸の酸度関数の大きさにしたがってよく反応し,おのおの相当するρ-ヒドロキシアゾ化合物を生成した。この反応でβ-ρ-アセトアミドアゾキシベンゼン[2]および[4]はα-体に変換した。(2)[5]のWallach転位で,オルト体として2-ヒドロキシ-4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼソ[10]を得,オルトーパラ比はほぼ1となった。この反応でα-[12]およびβ-p-(ジメチルアミノ)アゾキシベンゼン[13]の(4:1)混合体が生成した。(3)UVスペクトルによる追跡から,アゾキシ酸素と置換基にプロトン化した中間体を経て反応が進むものと推定される。(4)ρ-(ジメチルアミノ)アゾペソゼンのアミンオキシド[6]を硫酸処理すると,4-ヒドロキシー4ノー(ジメチルアミノ)アゾベソゼソ[9]が得られ,Wallach転位が進行する第三級アミンN-オキシドの最初の例と思われる。
  • 横山 佳雄, 西岡 篤夫
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NMR分光器を使用して,比較的はやい反応(k=0.1sec-1程度以下)を追跡しうる装置を製作し,2-フルアルデヒドと塩化ヒドロキシルアンモニウムの反応について研究した。synとanti各異性体の生成速度を同時に精度よく求めた結果,synとantiがの生成速度比は85:15で,かつ,この比は温度によりほとんど変化しないことを見いだした,このことから2-フルアルデヒドからの各オキシム異性体生成の比率は,原料である2-フルアルデヒドの回転異性体の存在比とほぼ等しいことが明らかとなり,フラン環の酸素原子とカルボニル水素がs-cisの2-フルアルデヒドからはsyn-オキシムが,またs-trans形からはsyn-オキシムが生成される可能性を示した。syn anti異性化速度を従来より精度よく求めた.また,反応の進行にともなって生成される遊離塩化水素が異性化を促進するということを,全オキシムに対するsyn-オキシムの経時変化から示した。
  • 八嶋 建明, 堀江 成, 斎藤 純子, 原 伸宜
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    複合金属酸化物を触媒に用いて,シクロヘキサノンオキシムから気相接触転位反応により.ε-カプロラクタムを合成する方法を研究した。各種の複合金属酸化物触媒を検討した結果,シリカーアルミナに担持した亜鉛一タングステン,ビスマスータソグステンの組み合わせが有効であることを見いだした。両触媒の最適調製条件を検討した結果,亜鉛一タソグステンでは,亜鉛対タングステンの原子比が1:2,担体1gあたり全量で1.5mg-atomの金属を担持させ,これを空気中800℃で2時間ずつ焼成したときに最大活性を示し,一方ビスマスータングステンでは,ビスマスとタングステンの原子比が2:1・焼成温座ば700℃のときに最大活性を示した。最適反応条件は・両触媒とも反応温度325℃・W7F3009.hr/molで,ε-カプロラクタムの最大収率は亜鉛-タングステン触媒で87%ピスマスータングステソ触媒で82%であった。
  • 伊藤 建彦, 金田一 嘉昭, 高味 康雄
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アソトラキン(AQ)の塩素ガスによる直接塩素化反応の詳細については明らかでない。著者らは高速液体クロマトグラフィー(カラム:Zorbax-SilR,溶出液:ペンタン)により26種のクロロAQがほぼ完全に分離できることを見いだし,この分析法を用いて反応径路,配向性など塩素化反応の詳細を明らかにした。
    ヨウ素あるいはパラジウム塩を触媒として用い,濃硫酸中100℃付近でAQと塩素ガスとの反応を行なうと各種のクロロAQの混合物が得られる。AQのα-位はβ-位よりも,濃触媒存在下では約5倍,Pd(OAc)2触媒では約10倍反応しやすい。塩素化により生成する1-クロロAQはAQよりも2・1倍速く塩素化され,AQが塩素化されるとざらに塩素化されやすくなることを示している。クロロAQの塩素化では置換基-Clのオルト,パラ配向性が優先する。なお配向性は触媒によりやや変化する。塩素化が進み二置換,三置換となるにしたがい,さらに塩素化されやすくなるため,反応は途中で停止することなく原料から四置換体までの混合物が得られてくる。なお,この反応条件下ではAQの一つの環には2個までレゆ塩素化は起こらず,四置換体が最終生成物となる
  • 岡野 光夫, 片山 正人, 茂木 静男, 篠原 功
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 88-92
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親水姓モノマーの2-ヒドロキシエチル4タクリラート(HEMA)と2-アミノエタンチオールの低重合反応および疎水性モノマーのスチレンとρ,ρ'-ジイソシアナトジフェニルジスルフィドの光低重合反応により,それぞれ片末端アミノ基のHEMA低重合体および両末端イソシアナト基のスチレン低重合体を合成した。さらにDMF溶媒中0℃で,それぞれの低重合体を反応させてABA型ブロック共重合体を合成した。
    このABA型プロヅク共重合体のDMF溶液からキャストしたフィルムのぬれを測定した。組成とぬれの関係は,ブレンドマー,ランダム共低重合体といちじるしく異なる。さらにフィルムのミクロ構造を電子顕微鏡で観察し,親水性および疎水性のドメインについて,それぞれの相違を明らかにした。ぬれは共重合体組成だけでなく,ポリマーのミクロ構造に大きく影響される。すなわち,親水性および疎水性のドメインの大きさと形状がぬれに大きく影響していることがわかった。
  • 岡野 光夫, 池見 昌久, 篠原 功
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親・疎水性の2-ヒドロキシエチルニメタクリラート(HEMA)低重合体の水-ジオキサン混合溶媒中の分子形態変化におよぼす溶媒組成,疎水性相互作用について検討した。アウラミンを用いるケイ光分析により,HEMA低重合体の分子鎖は,水-ジオキサン溶媒の水の多い溶媒中でα-メチル基による疎水性梢互作用によりコソパクトな形態となることがわかった。またジオキサソ添加により次第に疎水性相互作用は弱くなり,ジオキサン添加が30vol%程度でほとんど疎水性相互作用はなくなる。しかし分子形態の広がりはジオキサン組成約80vol%まで増加し,それ以上の添加により減少する。すなわち,親水基と疎水基にそれぞれ親和性の大きい水-ジオキサン混合溶媒系で,ジオキサン80vol%溶媒中で分子鎖はもっとも広がっている。また水溶性のHEMA-N-ビニル-2-ピロリドン共低重合体を合成し,水および有機溶媒の添加による分子形態変化および共低重合体組成と疎水性相互作用の相関について検討した。これより水中で,共低重合体中のHEMA組成が多くなるとα-メチル基の密度が高くなり,それにともなっていちじるしく疎水性相互作用が大きくなることが認められた。
  • 成智 聖司, 大橋 孝一, 三浦 正敏, 長久保 国治
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(メタクリル酸バリウム)(ポリマー塩)を窒素気流中で250~300℃の範囲で加熱すると,ポリマーの分子量はいちじるしい低下を起こすことがわかった。この主鎖切断(分子量低下)は1/M-1/M9=ktの関係が成立し,ポリマー主鎖はランダム切断を起こしていることを認めた。Arrheniusプロットによる活性化エネルギーは43.7kcal/molであった。また,ポリマー塩は300℃,5時間以上の加熱では一部が酸無水物を形成し,それ以下の条件では酸無水物が形成されないことがわかった。
  • 岡本 正雄, 青木 長寿, 石塚 修
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(α-クロロアクリロニトリル)の脱塩化水素を,1V,N-ジメチルホルムアミド溶液(ポリマニ濃度:3wt%)中60℃で,トリエチルアミンとの反応によって行ない,ポリマー中に壬CH(C…N)素なる構造部分を導入し(π:正整数),このような構造部分に基づく吸収スペクトルの特徴を調ぺた。反応のさいのトリエチルアミン量は,モル比[(C2CH5)3N]/-CH2-CCl(CヨN)で表わすとα57,1.14あるいは2.28であり,得られた試料の脱塩化水素率は28.4~95ほ%であった。
    これら試料の紫外,可視吸収スペクトルには,200~600nm領域に七つの吸収極大が観測された。これらの吸収が現われるのは,上記構造部分のπが異なればK吸収帯の吸収極大の波長mx(nm)が異なるからであり,箆とλ鵬xとの間には,ほぼ鵬x=59+160なる関係が認められた。
    一方,赤外吸収スペクトルに現われるおもな吸収パンドの特徴は,つぎのとおりであった。C≡N伸縮振動に帰属される2200cm弓バンドの吸光度は,脱塩化水素率とよい比例関係にあった。約1500cm髄1におけるバンドはC獄C伸縮振動に帰属され,箆が大きいほど低波数側に現われることがわかった。また,1195cm繍1バンドはηが大きい場合にのみ現われる特性吸収バンドであると推定された。
  • 大場 允雄, 中川 鶴太郎
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    異なった四つの分子量をもったアルギン酸ナトリウム水溶液の流動曲線を広い濃度範囲にわたって調べ,その溶液の非ニュートソ挙動について検討した。さらに,3種類の無機塩の添加による影響も調ぺた。
    零ずり粘度と高分子濃度とのlog-logプロットは,ある臨界濃度以上で直線を形成することが示された。さらに,この直線の勾配は,堪が添加されるにつれて増加することがわかった。
    η/η。~γτ(ただし,ηはずり速度ナにおける粘度,ηはずり粘度,τは最長緩和時間)プロットはBuecheの標準曲線とよく一致することがわかった。その結果求められた分子量Mr,は固有粘度から得られた分子量Mwとよく一致した。さらに,τは高分子濃度および添加塩濃度が増加するにつれて増加することがわかった。
  • 大場 允雄, 中川 鶴太郎
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    比較的濃度の高いアルギン酸ナトリウム水溶液の動的性質を約0.02~1.7Hzの周波数域にわたって測定した。この周波数領域では動的粘性率η'は周波数とは無関係にほとんど一定であった。しかし添加塩の濃度が増加するにつれて次第に動的粘性率η'の周波数依存性が認められるようになった。動的粘性率η,と高分子濃度との109-109プロットは勾配が約3。4の直線を形成したが,この結果は前報で見いだされた零ずり粘度と高分子濃度との関係とまったく同じであった。損失弾性率G"の時間一温度,時間一濃度の重ね合わせは良好で,本研究で用いられた変数(温度,濃度,周波数,添加塩濃度など)の範囲内では緩和機構の本性には変化がないものと考えられた。しかしながら,塩の添加は重ね合わせに対して多少の影響をおよぼし,とくに添加塩濃度が02mol/lの溶液については上述の重ね合わせが十分にはできないことが認められた。
  • 白山 肇
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフとケイ光分光光度計を連結した装置によって,大気中に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)の分析を簡単期つ迅速に行なうことが可能となった。ハイボリューム・エア・サンプラーによって捕集した粉じん中ゐPAHを真空昇華装置で抽出後,高速液体クロマトグラフーケイ光分光光度計連結装置に導入し,PAHの各成分を分取することなく同定・定量の各操作をケイ光分光光度計によって連続的に行なうものである。
    高速液体クロマトグラフのカラム.として使用したゾルバックスODSの特性を把握するため,分離条件(移動相組成,カラム温度,カラム圧力)と保持時間,分離度との関係を20種の多環芳香族炭化水素の分離挙動および分離度などについて検討した。その結果,このカラムの理論段数はべソゾ[a]ピレンで25cmあたり5400段であり,従来用いられているパーマブェィズODSに比較して分離性能がきわめてすぐれていることが明らかになった。さらに溶離ピークの流れを一時停止しケィ光分光光度計検出器によるケィ光スペクトルの測定によって同定する方法を示した。
  • 浦野 紘平, 谷川 昇, 増田 俊男, 小林 義隆
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 124-131
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    排ガス中の窒素酸化物除去のための基礎研究として,3種類の活性炭に対する窒素中または水蒸気や酸素共存下での二酸化窒素の吸着形態,吸着平衡,吸着速度などを検討した。二酸化窒素は約50~5000PPm,水蒸気は1.4~30%(相対湿度x%=3.6~79),酸素は2.5または10%,吸着温度は50~125℃とした。
    吸着形態は,窒素中では二酸化窒素のまま吸着されるが,水蒸気共存下では硝酸となって吸着され,その濃度はy%はxによって決まり,xが6以下ではy=78,xが6以上ではy=100-8.6x0.56で与えられた。吸着平衡は,Freundlichの吸着等温式で表わされ,比表面積の大きな活性炭の吸着量が多かった。窒素中での吸着熱は約19kcal/molであった。水蒸気共存下での見かけの平衡吸着量は劣の増加につれて大きくなり,二酸化窒素換算の平衡吸着量は劣が約6~50では窒素中での平衡吸着量とほぼ等しかったが,xが約50以上になると急激に減少した。吸着速度は,ガス側拡散速度の無視できる条件では粒内拡散律速となり,固体濃度基準の粒内拡散係数は,二酸化窒素濃度の約0.8乗に比例したが,活性炭の種類による差は小さかった。酸素の共存の影響は認められなかった。
  • 秋吉 亮, 宇野 博幸, 杉田 治八郎, 白崎 高保
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 132-134
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effects of compression pressure on the catalytic activities of powdered nickel-carbon catalysts were investigated. The highest catalytic activity for the dehydrogenation of isopropyl alcohol was obtained by compression at about 2000 kg/cm2, regardless of the amounts of the supported nickel or the supporting method of nickel. A compensation effect was observed as expressed by In A =2.30 E +1.38, where A is the frequency factor and E is the apparent activation energy. It was found that the increases of the apparent rate constants were due to decrease in both A and E by compression at about 2000 kg/cm2.
  • 藤永 太一郎, 桜 幸子
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 135-137
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The equivalent conductance of higher tetraalkylammonium perchlorates was measured in hexamethylphosphoric triamide (FIMPA); the values obtained for NH4, + tetraheptylammonium ion (n-Hep4N+), tetradecylammonium ion (n-Dec4N+), tetradodecylammonium ion (n-Dod4N+), trioctylpropylammonium ion (TOPN+), trimethyldodecylammonium ion (TMDN+), tetradecyldimethylbenzylammonium ion TDDBN+ and hexamethylenepiperidinium ion (5N6+) were 21.20, 20.80, 21.05, , 22.92, 20.75, 18.00, 20.80 and 22.72 cm2Ω-11mol-1, respectively.
    These values together with the data for Me4N+, Et4N+, n-Pr4N+, n-Bu4N+ and n-Hex, N+ in HMPA solution' indicate that Et4N+ is the smallest in the effective radius calculated from the Stokes' law and TMDN+ is the largest in the tetraalkylammonium ions examined. The value for n-Dod, N+ is much the same with the value for Me4N+. The value for 5 N 6+ is between the value for Me4N+ and that for n-Pr4N+. The solvation number obtained from the effective radius is 1-2 for NH4+
  • 宮野 壮太郎, 牛山 秀彦, 橋本 春吉
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 138-140
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The combination of triPhenylphosphine and carbon tetrachloride has been utilized widely for the chlorination of alcohol under mild conditions. The presence of sodium iodide in this reaction system provides a convenient route for the synthesis of primary and secondary alkyl iodides (Table 1). Primary alcohols reacted smoothly within 1.5 hr at ambient temperature to afford the corresponding iodides in excellent yields. Iodination of secondary alcohols required somewhat higher temperature and longer reaction time, but no significant amount of rearranged or chlorinated products was formed (less than 3%).
  • 石川 延男, 大沢 正, 枝村 一弥, 林 誠一
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 141-143
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    [1-(Trifluoromethyl)tetrafluoroethoxy]acetonitrile, which was derived from chloroacetonitrile and hexafluoroacetone with potassium fluoride, was hydrolyzed easily to give the corresponding amide [4] and acid (5).
    The solubility and pKa of [1-(trifluoromethyl)tetrafluoroethoxy]acetic acid 5 were determined as 1.34 al and 2.83, respectively, showing that (5) is much less soluble in water than chloro- and cyanoacetic acids with similar acidity.143
  • 山名 昌男
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 144-145
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Lanthanoid(BI) phthalocyanine complexes were synthesized by the exothermic reaction by phthalonitrile with various lanthanoid chlorides. The products consisted of the plane ([I] type) and sandwich ([II] type) structure complexes. Increasing the radius of lanthanoid ion, the yield of [I] type complexes decreased, while that of [II] type complexes increased. This tendency is considered to be due to the acceleration of the reaction from [I] to [II] type complex with increasing the radius of lanthanoid ion. In neodymium and praseodymium complexes, the yield of [I] type complexes decreased extremely and [II] type complexes were formed predominantly.
  • 西 久夫, 北原 清志, 時田 澄男
    1977 年 1977 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 1977/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1, 1'-Diary1-3, 3'-bi(pyrrolo[2, 3-b]quinoxalinylidene)-2, 2'-diones [4] (isoindigo analogues) have been synthesized in three steps. (1) N-Aryl substituted dichloromaleimides [2] were prepared by the reaction of dichloromaleic anhydride [1] with aromatic amines in refluxing acetic acid for one hour. (2) The reaction of [2] with o-phenylenediamine in Methyl Cellosolve at 60-70°C for 2 hours gave 1-aryl-3-chloropyrrolo[2, 3-b]quinoxalin-2(4H)-one [3]. (3) Dehydrochlorination of [3] in DMF afforded 4 J as red to reddish brown powders.
    Compounds [4] are soluble in H2SO4 with bluish color, but are sparingly soluble in organic solvents. They have excellent thermal resistance. The structure of the product obtained by the reaction of [1] with aniline was also examined.
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