1977 年 1977 巻 1 号 p. 9-15
平均粒子径1.3μの鉄粉末を6%のO2を含むHe気流中,300~700℃で酸化し,その速度過程をミクロ熱テンビンを用いて測定し,前報2のひげ結晶成長速度と比較検討した。
O2吸収量の時間に対する変化は,初期数分間の速い吸収のあと2時間以上にわたりゆるやかに増加する単調な経過を示し,その増加速度はElovich式 d(ΔW)/dt=kexp(-α(ΔW))にしたがった。初速度kは480℃の上下でそれぞれ24.5,9.7kcal/molの温度依存性を示した。この境の温度は,ひげ結晶成長量が極大(全酸素吸収量の4%に対応)となる温度と一致し,この温度以上で酸化物層形成速度の温度依存性が増すため,ひげ結晶成長反応が起こるひげ結晶根本部への鉄イオンの供給速度が減速されると考えられた。酸化物層の厚さ(y)の増加速度は,ひげ結晶の長さ(l)の伸び速度と同様,対数則にしたがったが,減速係数(α)の負の温度依存性は,yについてはあるがlについてはほとんどなく,結果として低温部ではlの伸びの方が望の増加より上まわった。
以上の事実に基づき,鉄イオンの供給は,酸化物層形成反応相へは体拡散が主と考えられるのに対し,ひげ結晶根本部へは転位拡散のような短回路拡散によっていることが示唆され,これは同時に,前報のひげ結晶の根本成長機構を支持した。
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