抄録
クロロ-p-ペソゾキノン類と亜硫酸ナトリウムとの反応は,強酸性域(pH<4)で酸化還元反応が進行するが,pH<2でその進行が遅くなる現象がすべての反応系に共通して認められる。H2SO3のpK1値(=1・9)から,酸化還元反応の進行はH2SO3よりHSO3-イオンによるものと判断された。また,クロロ-p-ベンゾキノン類-Na2SO3反応系では,テトラクロロ-p-ベンゾキノン-Na2SO3反応系での酸化還元反応がもっとも遅く,4個の塩素による立体障害によるものと判断された。付加反応および置換反応は,弱酸性から中性域で進行する。以上の諸事実から,酸化還元反応はHSO3-イオンがキノン環のカルボニル炭素を攻撃することにより進行し,付加反応および置換反応はキノン環の2,3,5,6位の炭素を攻撃して進行すると判断された。また,HSO3-イオンの攻撃位置が反応溶液のpHに依存するのは,キノン環の基質の変化によるものではなく,HSO3-イオン自身の変化によるものであることを他の無機硫黄酸化物イオンの反応と比較することにより考察した。