日本化学会誌(化学と工業化学)
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ビス(L-オルニチナト)コバルト(III)および(D-オルニチナト)(L-オルニチナト)コバルト(III)の円二色性スペクトル,異性化平衡および配座解析
渡部 正利松本 睦良長岡 照夫吉川 貞雄
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1979 年 1979 巻 8 号 p. 1045-1049

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抄録

レオルニチンを2個配位したコバルト(III)錯体の可能な3種の異性体を合成し,それらの吸収スペクトル,CDスペクトル,PMRスペクトルおよび異性化平衡後の異性体のモル分率について報告する。合成した各異性体を異性化させることにより得られた3種の異性体は三組異性体であることを確かめた。また合成のさい[Co(D-orn)(L-orn)]+錯体が生成するので,アミノ酸のL→D転換が起こるものと考えられる。3種の異性体のCDスペクトルは配置効果と隣接効果曲線の和でよく表わすことができ,構造とCDスペクトルはよく対応することが明らかになった。同様の方法を[Co(L-2,4-dab)2]+(dab=ジアミノブチラートイオン)の3種の異性体のCDスペクトルにあてはめたところ同様の配置効果曲線が得られた。この錯体のPMRスペクトルは前に報告したプロトン化学シフトの傾向とよく一致した。それによっても4番目の異性体は[Co(D-orn)(L-orn)]+錯体であると推定された。[Co(D-orn)(L-orn)]+の各異性体を活性炭を用いて異性化平衡にすると,濃度分布trans(O):trans(Na):cis(Na)は0.09:0.57:0.34であり,trans(Na)異性体がもっとも多かった。これはいままで報告してきた[Co(N)3(O)3]異性体の分布と大きく異なることがわかった。[Co(D-orn)(L-orn)]+の異性体を異性化すると[Co(L-orn)2]+および[Co(L-orn)2]+異性体も生成し,そのモル分率においてtrans(O)異性体の濃度が小きかった。ひずみエネルギー計算をしたところ,その大きさはモル分率の大小をよく説明しうるものであった。

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